TSUNA-GARU-TOCHIGI

食べる・見る・買う…何気ない営みの中にも、実は栃木の良さがいっぱい。生産者、農作物など普段は裏方であるもう一人のヒーローを紐解くことで「人」の繋がりが見えてくる。

2019年10月

吉澤泰範さん


あまり人が手掛けない野菜作りをライフワークに

 そもそも、初めから志高く突き進む道を極めようとする人ばかりではない。流れに身を任せていたら、自然にたどり着いた先が、“今、ここ”だという人は、案外多い。さくら市で農業を営む吉澤さんも、東日本大震災時に職を失い、農作物を育てることになった、いわば運命に導かれてこの道に辿り着いた一人だ。「幼い頃に祖父母の農作業を手伝った程度で、特別な勉強はしていない」というが、5反の畑で「マイクロキュウリ」や「サラダゴボウ」「アロマレッド」など、あまり目にしない多品目を見事に栽培している。牛の堆肥とわずかな化成肥料で土を作り、農薬の量は野菜の種類によって変える。まるで実験するかのように新しい作物を育てる様子は、農業の魅力にどっぷりとハマっているようにも見える。学生時代に励んだ柔道と相撲で鍛え上げられた体躯は、体力を必要とするこの仕事にピッタリだ。現職への流れは、吉澤さんの経験に基づいた、辿るべき道だったに違いない。
 高校の調理科で講師を務める傍ら、鹿沼市でフレンチベジレストラン「アンリロ」や、フレンチと薬膳を合わせたデリの「オードヴィ」、ビストロ「Le Perican Rouge」と、さらに六次化商品を生み出す“ラボ”も経営するオーナーシェフの上村さんが、吉澤さんのニンジンでひらめいた一品は、『キャロットラペ』。「水分が少ないぶん味が濃いので、生で食べるのに最適です。シャキシャキの食感が楽しめますよ」と、手際よく調理。「薬膳セラピスト」の確かな知識で、旬の食材を季節に適した調理法で提供してくれる。
 身体の声に耳を傾ければ、自ずとセルフメニューができ上がる。元気の源を授けてくれる生産者と料理人に、感謝。

Information

吉澤泰範さん

キャベツはクボタの半自動野菜移植機「ベジータキッド」で植え付けを行う。「マイクロキュウリ」はピクルスに最適。

フレンチ×薬膳 オードヴィ

* TSUNA-GU 店

Information

322-0067 鹿沼市天神町1852-7

電話:
0289-63-0402
営業時間:
AM11:00〜PM6:00
休:
土・日曜、祝日
駐車場:
有り

* TSUNA-GU グルメ

キャロットラペ

 ニンジンとリンゴ、クコの実をニンジンのドレッシングで和えたサラダ。白ワインビネガーの酸味と、きび砂糖や食材の甘みがバランスよく調和した爽やかな味わいが魅力。溜まった疲れを癒す一品。