農家紹介

農産直売所「あぜみち」にご提供いただいている農家さんや、あぜみちで取り扱っている季節の野菜を使ってくれているお店のご紹介です。

お知りになりたい農家さんを選んで下さい。

川上 優さん母の想いを引き継ぐ畑で 夫婦が育てる大根

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定年まで、一般企業で事務職を務めあげた川上さん。転勤族で何度も居を移したが、最後は母が暮らす那須烏山市に戻った。幼くして父を亡くした川上さんを、母は米農家として女手一つで育て上げた。そうした環境もあり、退職後は自然に畑仕事を始めた。特に農家としてやっていこう、という気構えもなかったという。「その頃母は90歳を超えていましたがまだ現役で、私が畑をやっているのを見ては指示してましたね」と笑う。その後お母様は107歳で大往生され、川上さんは畑を引き継ぎ、本格的に農業に参入した。  大根の栽培は春と夏の年2回、暑さに強く総太の「夏の守(かみ)」を育てている。そして手間はかかるが葉付きで出荷するのが川上さんのこだわりだ。価格もできるだけ安くしているそう。「だから全然儲からないんですよ」と笑う。二人三脚で従事する奥様も「こんなはずじゃなかったんですよ」と言いながら笑顔だ。利益だけを追求しない、自慢の野菜をたくさん食べてもらいたい、そんな想いが感じられる。大根以外にも川上さんが育てる野菜は実に多品種。この時期だけでも、大根・里芋・サツマイモ・人参・カブ・大豆・柿など。「いつの間にか増えちゃって…」という川上さんに「今後の目標は種類を減らすことね」と奥様。そんなお二人の素敵な関係が、やわらかく優しい味わいを持つ、川上さんの野菜に現れている気がした。  大根を使った冬の代表料理といえば「おでん」だろう。宇都宮のおでんの名店「種一本店」では、高さ10センチを超える大きな大根おでんが人気だ。一つずつ手間を惜しまない、隠し包丁など職人の技が活きる、ここでしか味わえない一品。日本人でよかったなぁとしみじみ思いつつ頬張りたい。

50mを超える畝が6本ならぶ大根畑。収穫した大根を水洗いし、きれいにテープ巻きまですべて手作業だ。

塙 朝章さん・寿枝さん家族の時間を大切にする 農業という“ものづくり”

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ナスとトウモロコシ、ショウガを計50アールの畑で露地栽培する塙農園。主力のナスは約20アールの土地に1000本の苗を植えて栽培、1年で約8トンを出荷する。ナス栽培では王道のV字4本仕立てという支柱で育ち、アーチ状に枝が重なる畑は、実や枝の紫色と相まって少しミステリアスな、しかし生命力にあふれた場所となっている。  名古屋出身、栃木で自動車関係の会社に勤めていた朝章さんは、42歳だった6年前に就農、畑を借りてナス栽培を始めた。夫の異業種転職に妻は驚きそうだが、実は実家がナス農家だった寿枝さんはすんなりと受け入れた。台風の被害でめげてしまいそうになった時には、先輩ナス農家である妻の実家から、自然災害に対する心構えを、厳しい言葉ながらも教えてもらった。   もともと物事のプロセスを立てて考えるのが好きという朝章さん。それは野菜作りにも生かされる。いわく「車も野菜もどちらも、ものづくり。何をすればどうなるか、イメージすることは変わりません」。会社員時代と異なり、すべて自分で決められる裁量権を持てるのも、農家の良いところだと教えてくれた。さらに「特定の休みはないが、雨が降ったら家族でおでかけができますしね」。昆虫が大好きな息子さんも畑に遊びに来る。子どもの声が聞こえる所で作業ができるのは、やはりうれしそうだ。  比較的手頃な価格で手に入る、おうちごはんの味方のナスを、高級和食に昇華させるのは、宇都宮にある完全予約制のそばと懐石料理の店「喜饗」。ナスの紫色を残すため、ダシを染み込ませては二度氷水に浸すという、ていねいな仕込みを経た煮びたしは、「千両なす」の食感も生かされた繊細な味わいと美しさを兼ね備える。

野菜はあぜみち全店で購入可。塙農園ではナスを5月から11月まで栽培・出荷している。

鈴木 俊喜さんお客様の笑顔をやりがいに いつか芳賀ブランドを!!

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近年若い世代の農家が増え、協力し新しい取り組みを行うなど、活気を見せる芳賀町で、6年前から梨栽培に取り組む鈴木さん。都内で美容院勤務、銀座の一流飲食店の店長代理を経て就農したという異色の経歴の持ち主だ。「飲食店時代、なかなか品質の良い野菜に出合えず、だったら自分で作ろうと思って」。奥様が農業をやりたいという希望を持っていたことも後押しし、未経験のまま飛び込んだ。   寒暖差がある芳賀町は甘い梨が育つ名産地。鈴木さんの父も梨農家だが、そこを継ぐのではなく別経営で、違った栽培方法を取り入れている。「10種を超える梨を一人で効率的に栽培していく方法として、木と木をつなげていくジョイント栽培を行っています」。常に何が自分の畑に適しているのか模索し続ける。「最初は60~80種類の野菜を育て、さまざまな条件を試し、何がどう違うのか実験していました」と笑う。そうした試行錯誤は“苦労”として語られることが多いが、鈴木さんは「楽しい」と笑顔。「職は変わっていますが、お客様の笑顔が見たいという気持ちはずっと同じです。自分が試行錯誤した結果で喜んでもらえることが幸せです」。信頼して作物を購入してもらうために「グローバルGAP」を取得、販売する野菜に自作のレシピを付けて食べ方を提案するなど、育てて売るだけではなく、その一歩先の気配りを持って農業と真摯に向き合う姿勢は、全国の料理人からも支持され、鈴木さんの野菜は県内だけではなく全国に運ばれている。  そんな種類豊富な鈴木さんの野菜を県内で購入できるのは、あぜみちと「道の駅はが」のみ。「あぜDELI」では、惣菜としても販売。愛情たっぷりに育てられた秋の味覚「梨」を存分に味わおう。

スイーツなどの飾りとして人気のエディブルフラワーは、遠方から買い付けに来る人もいるそう。

内藤 聖さん豊かな自然が育む栄養豊富な夏のオクラ

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緑豊かな田園地帯にある内藤さんの畑。青々と茂る葉が、まるで緑の海のようにオクラ畑を埋め尽くす。美しく手入れされた畑は日々のていねいな作業の証だ。内藤さんが就農したのは7年前。それまで飲食業に就いていたが、体調を崩したのを機に祖父の農地を引き継いだ。「最初は肥料をやって水をまいておけば大丈夫でしょ、と思ってました」と笑う。農業の知識ゼロからの出発は失敗の連続。何千株もの苗をだめにし、数カ月間無収穫の時もあったという。「特に土づくりには苦労しました。原因不明の病気が出て土を調べたら、カルシウムやリンなどが不足していることがわかり、カキ殻を砕いてまいたり。今も土づくりの試行錯誤は続いています」。そんななか助けてくれたのは地域の先輩たち。「あぜみちの集荷場で先輩と話すようになり、いろいろなことを教えてもらっています。この地での長年の経験は、どんな知識よりも勝ります。師匠がたくさんいてくれてありがたいです」。秋からは主力商品のラディッシュやイモ類の出荷が始まる。「今後は山菜の出荷にも力を入れていきたい」と話す内藤さん。「工夫次第で結果が変わるのが農業の面白さ。若い人にもどんどん参入してきてほしいですね」と話してくれた。  夏の太陽を浴び元気に育ったオクラを、和食の定番『タコおくら』に仕上げてくれたのは、和の名店「京都吉兆」で修行を積み、その心を伝承する「日本料理 篠」の篠原料理長。「オクラは夏の和食に欠かせない食材。旬の味を家庭でも楽しんでください。器にスープの素と刻んだオクラを入れ、熱湯を注ぐだけでもおいしいスープになりますよ」と教えてくれた。栄養たっぷりの夏野菜を、上手に食卓に取り入れたい。

豊かな自然が育む栄養豊富な夏のオクラ

生井果樹園 〜NAMAI FRUITS GARDEN〜 生井 健斗さん地域第一人者として若き力が桃栽培に尽力

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大きなハウスが建ち並ぶ2ヘクタールの畑で、梨をメインにさまざまな果物を栽培する生井さん。一度は農業とは無縁の企業に就職したが、21歳で就農した。「当初は梨だけだったのですが、10年前から父が桃を始めました」。芳賀町で桃を栽培する農家はなく、知識ゼロからの出発。まさに第一人者として親子で取り組んだ。そんな折、父が他界。わからないことばかりで戸惑う時に助けてくれたのは、父の友人たちだった。若くして後を継いだ生井さんを支えてくれたという。「もともと芳賀の農家さんは、大変な時はみんなで乗り越えよう、という仲間意識が強く助けられています」と話す。そして周囲に支えられながら4年前、ようやく桃の出荷にこぎつけた。しかしまた難題がふりかかる。「誰もここで桃が採れるなんて知らないので、販売先がなかったんです」。そこで取った行動は「桃を持って、ケーキ屋さんを回りました(笑)」。販売先も自身で切り拓く、そのバイタリティに感服だ。現在は、ブルーベリーやサクランボなどあらたな果物栽培のほか、ハウス梨の栽培にもチャレンジするなど、精力的に動き続ける生井さん。「果樹園と名乗っているのだから、父はいろいろな果物を栽培したかったはず」。父からのバトンをしっかりと受け取り進み続ける。終始農業を心から楽しんでいることが伝わってくる生井さん。今後のさらなる活躍を期待したい。  そんな生井さんの飛び込み営業を受け、桃を使った絶品スイーツを生み出したのは「杜のパティスリーぐるまん」の石川 喬シェフ。「生井さんの桃は名立たる名産地の桃とまったく引けをとらない」と太鼓判を押す。ケーキ・タルト・ゼリー…この時期限定の桃スイーツ、短い旬を逃さず味わいたい。

地域第一人者として若き力が桃栽培に尽力

せい子ファーム渡辺 宏さん・せい子さん元気で明るいスタッフと年間休みなく野菜を栽培

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 肥沃な黒土の大地が広がる小山市西部に、東京ドーム2・5倍、12haの広さを持つ渡辺さんの畑がある。一年を通して、ダイコン、ゴボウ、ブロッコリーなどさまざまな野菜を休みなく栽培、出荷しており、現在はニンジン、間もなくネギが出荷時期を迎える。10名ほどのスタッフを抱え「農作業だけではなく、経理も人事も全部自分でやるから大変だよ」と笑う渡辺宏さん。以前はまったく違う分野でサラリーマンをしながら農業にも携わっていたが、50歳を機に退職し専業農家になったそう。「サラリーマン時代は夜中まで会社で仕事をしてきても、朝5時に起きて農作業をしたり、とにかく身体が大変だった」。そんな旦那様を支えてきた奥様のせい子さんと、これまで二人三脚でやってきた。土づくり、種まき、植え付け、除草、収穫と途切れなく続く仕事。「農業は天候などに左右されて、思い通りにいかないことも多いし、決して楽な仕事じゃない」と話す宏さんの横で「でもね、おいしかったよって言ってもらえるとうれしいの」と笑顔のせい子さん。そしてその様子を見守るスタッフも皆笑顔。あたたかな雰囲気の農園で愛情たっぷりに育てられた野菜なのだから、格段においしいに決まっている。渡辺さんの野菜はあぜみち全店で購入できるので、その味わいを確かめてほしい。  「ネギは和食には欠かせない食材です」と話すのは、「御料理 自治医大 多門」の関山オーナー。四季折々、かたちにとらわれない創作和食を得意とする同店らしく、ネギが主役の一皿を提案してくれた。「ネギはクセの強い食材ですが、熱を通すと甘みが立ちます。秘伝の方法で揚げたネギもおすすめです」。ネギが苦手な人にも味わってほしい一皿、予約をしてぜひ。

平坦な地形と、季節感がはっきりしている小山市の気候は、四季折々の野菜栽培を可能にしている。

ビオファーム サイトウ 齋藤 藤男さん元料理人が育てる安心でおいしい無農薬野菜

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 以前はフランス料理店のシェフという異色の経歴を持つ齋藤さん。料理人として食材と向き合う中、規制緩和され、農薬の使用が増えていく日本の農業に危機感を感じたという。「料理をおいしいと食べてくれる人たちに、自分は安全な食事を提供できているのか?と農業に対する不信感を感じ、自分で野菜を育てようと思うようになりました」。料理人としてのキャリアを捨て、那須烏山市で有機農業を実践する「帰農志塾」に飛び込み一からノウハウを学んだ。現在は、5カ所ある畑で、80~90種類の野菜作りに取り組んでいる。一つひとつ手間暇をかけ育てられる齋藤さんの野菜からは、野菜が本来持つ深い味わいと、大地の力強さが伝わってくる。それは齋藤さんの「安心でおいしい野菜を食べてほしい」という元料理人としての想いの結晶でもあるのだ。「野菜作りで大切なのは土。栄養が多すぎてもダメで、微生物とか酸素濃度とかバランスが大事」という。「土壌の状態は雑草を見ればわかります。うちの雑草は元気でしょ?」と笑うが、その笑顔からは確かな自信を感じる。「今後は米作りにチャレンジしたい。帰農志塾では、手で苗を植え草を抜く。そうして手間をかけて育てた米は本当においしいんです。日本人の命の源は米ですから、そういう米を育てたいですね」。齋藤さんが育てる米を食べてみたい、そう思わずにいられない。  そして、開店当時からチャーハンには小松菜を使用するなど、小松菜を使った料理を提供しているのは、宇都宮市の人気中華料理店・小閣樓。「持ち味のシャキシャキとした食感と独特のエグミがいきる一皿」と矢野オーナー。小松菜の良さを最大限引き出した料理は、新たな味わいを教えてくれている。

少量多品目栽培の畑では、現在はサニーレタスや小松菜、キャベツなど葉物が最盛期。ここからブロッコリー・とうもろこし・カボチャと出荷が続いていく。

ベジタブルプラント今福 長山 雄貴さん足利のおいしい水で育てる植物工場産のレタス

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 閑静な住宅街の一角に建つ建物。そのなかで8千株ものレタスが栽培されているとは誰も想像できないだろう。この植物工場で『織姫レタス』を育てる長山さんは「自分が農業をやるなんて考えていませんでした」と笑う。「父が鉄工所を経営していて、プラントで使う棚の部品を作ったことでこの栽培方法を知り、自分たちでもやってみようということになりました」。農業の知識も経験もまったくないなか、ほかのプラントに通い栽培方法を学び、試行錯誤の後4年前から本格的に工場を稼働したそう。  種床に種をまき、収穫まで40~50日。LEDライト、空調、給水は自動で管理され、人の手が必要なのは水に加え与える養分の管理と、植え替え、そして収穫だ。屋内でしっかり管理され育つため、害虫被害もなく安定した品質を保つ。狭い敷地の中、縦に栽培棚が積み重っていることで、移動が少なく効率的に作業ができるだけでなく、計画的に成長を調整することができるので、長期休みの取得も可能だ。「新しい農業の在り方の一つだと思っています」と長山さん。土地を有効活用し、少ない労力で効率よく作物を育てることができるこの工場農業は、作業が大変でなかなか休めない、というこれまでの農業のイメージを変えるかもしれない。温暖化など変化していく環境の中、安定した収穫が見込める点も魅力となっていくだろう。さまざまな可能性を秘めた長山さんの工場、今後の展開が楽しみだ。  その長山さんのレタスが楽しめる1stCAFEの鹿島店長は、「やわらかくシャクシャクとした独特の食感が特徴。えぐみのない味わいは子どもにも人気です」と話す。四季を通して安定した品質と価格も魅力のおいしいレタス、一度ぜひ味わってみて。

一見倉庫のような建物の中に、 スマート農法を取り入れた土のない「レタス畑」が広がっている。

いちご大家族 坂本いちご農園 坂本 幸正さん土づくりにこだわり味よく大粒なイチゴを栽培

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 美しく広がる田園風景の中に建つ8棟のハウスで、とちおとめ・スカイベリー・とちあいかの3種類のイチゴを栽培する坂本さんは、就農前は工場に勤務するサラリーマンだったそう。「もともと自然の中で育ったこともあり、いつか農業をやりたいと思っていました」。やるなら生産量全国一のいちごで、と「いちごの里」の研修生に。その後独立し、今年6年目を迎えた。農園では「モリンガ・ステビア栽培」を採用。ビタミンやミネラルが豊富な海藻粉末を水に混ぜ、毎日イチゴに与えている。こうすることで土の中の微生物が増えて土が活性化、イチゴが本来持つ力を発揮し、元気に育つという。元気な株には大粒で味がよく、ツヤがある美しいイチゴがたくさん実る。「まだ新しい栽培法なので、これから改良していきたいですね」。
 イチゴ栽培は冬~春にかけてのイメージがあるが、実は一年中作業は続く。3月からは出荷作業とともに苗づくりが、5月にはハウス内を何もない状態に戻し、あらたな畝を立てる作業が始まる。そんな多忙な日々を「日の出とともに出勤して日が暮れると帰る、一年中忙しいですよ」と笑う。「工場勤務の安定よりも、自然の中で働くこと、そしてお客様から、おいしいと言ってもらえることが何よりうれしくて、農業を始めてよかったと思っています」と語る坂本さん。いずれは実家のある栃木市でハウスを増やしていきたいと夢を話してくれた。
 そんなイチゴを使ったスイーツを考案してくれたのは宇都宮市の名店「アルページュ」の糸井亮介シェフ。イチゴをさまざまな調理法で組み合わせた、見ているだけで幸せな気分になれるイチゴ尽くしの特別なスイーツは、要予約で味わうことができる。

イチゴを大きく育てるため、脇の花芽を摘んだり、害虫対策に古い葉を取り除いたり、細かい作業をていねいに行っている。

いちご兄弟 中島 亮佑さん食べて健康になれる栄養豊富なイチゴを栽培

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 小山市西部の田園地帯。いちご兄弟という名前の通り、兄弟2人で営む農園では、現在6棟のハウスでとちおとめ・スカイベリー・とちあいかを栽培している。実家は動物病院、中島さん自身も一度はサラリーマンをしており、農業とは無縁だったが「次第に農業をやりたいと思うようになりました」。やるなら全国一のイチゴで、と思い立ち「いちごの里」の研修生に。経験を積み、6年前に独立した。独立にあたり、当時大学生だった弟の望さんに手伝ってもらい、ここまで二人三脚で歩んできた。
 いちご兄弟のコンセプトは“イチゴを通して人を豊かに”。夏は太陽熱で土の消毒を行い、害虫にはそれを食べてくれる天敵を散布、土を健康に保つために、微生物や酵素資材を定期的に与えるなど、農薬を可能な限り使わない栽培を行っている。「毎年新しいことを試しています。人の数だけ農法があって、何が正解かわからず難しいですが、だからこそ面白いのかも。この道を選んでよかったと思っています」と笑顔。完熟での出荷にこだわり、現在は直売のほか、道の駅みかも、あぜみちでの不定期販売など、購入場所が限られているが、今後は規模の拡大も視野に入れる。「技術を高め、ここのイチゴしか食べられないと言ってくれる常連さんにも、もっと喜んでもらえるよう、食べて健康になれるおいしいイチゴを作りたいですね」と語ってくれた。
 そんな中島さんのイチゴを使ったスムージーを提供しているのが『卵とミルクと』。「中島さんのイチゴは砂糖がいらないくらい甘くて食感も最高です」と料理長の田中一夫さん。一杯にイチゴ200グラム入り、イチゴそのものの味わいが楽しめる人気商品は、季節のスムージーとして夏ごろまで楽しめる。

おだやかな音楽が流れているハウス内で、ストレスなく育つイチゴ。真っ赤に完熟したイチゴは美しく、見た目も味も最高品質。

めおとや農園 仁平 康夫さんR293を“イモ街道”に!!サツマイモに情熱を注ぐ

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 国道293号線を「イモ街道にしよう」と奔走中の仁平さん。茨城県日立市から足利市まで続く国道293号線はサツマイモの産地が並ぶ「さつまいも街道」。昨年末この国道沿いにオープンしためおとや農園直売所では、仁平さんが育て加工した干し芋や焼き芋のほか、県内各地で作られている他社の干し芋商品も販売されている。ライバル会社の商品を一緒に販売するのは「みんなで盛り上げていきたいから」。県にも働きかけ、JAしおのやにサツマイモ部会を設立、現在会員は9名だが、来年度には20名に増える予定だ。
 普段は米の仲買をしている仁平さんに5年前転機が訪れた。「農業生産法人 匠屋の土屋社長と出会い、サツマイモ作りの手伝いをしたらハマってしまって。自分でもやってみたいと仲買と二足のわらじで就農しました」。細い1本の苗を土に挿すと5カ月後に大きなイモが土の中から出てくる。「それが楽しくて仕方ない」と笑う。3年前からは干し芋作りを開始。イモをふかし皮をむき、ピアノ線でスライスして網に干すまですべて手作業だ。今後は菓子店などとコラボし商品開発をするなど、地域全体で盛り上げていきたいと話す。「農業は楽しいけど、儲からないとだめ。私のやり方が今後に続く人のモデルになれば」と新規参入者へ惜しみなく技術を伝えている。「いつかサツマイモを地域の代表農作物にしたい。そして店で農産物直売会とか開けたら楽しいだろうね」と笑顔で夢を語ってくれた。
 そのサツマイモを前に「種類によって甘さも性質も全然違う」と教えてくれたのは、イタリア料理アネッロの和氣弘典シェフ。「低温で加熱すると甘みが増す」というサツマイモ。皮まで余すところなく使い仕上げるサツマイモ料理は冬季限定だ。

小さな焼き芋を詰めた「ちびいも」は一番人気。ねっとりとした濃厚な甘さが楽しめる。通常サイズの焼き芋『焼甘藷』も販売中。

小山いちご農園 小山 雅史さんイチゴへの情熱が育む濃厚美味なスカイベリー

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 宇都宮市東部の田園地帯で「スカイベリー」のみを4棟のハウスで栽培する小山さん。父親は「とちおとめ」と「とちあいか」を育てるイチゴ農家だが、当初、自身はJAに勤務。しかし父が高齢になったことと、自身の今後を改めて考えた末、40歳を機に転職を決意したそう。県の農業大学校を経て就農し、今年2回目の収穫期を迎えている。「身近な先生として父がいてくれるのは心強いですが、同じイチゴでも種類により育て方が全然違うんです」と難しさを話す。
 小山さんのスカイベリーは味が濃いと評判だ。おいしいイチゴを育てるコツは「水に液肥を混ぜ、少量を多回数で与えています。また自家培養した菌を散布し改良したりしています」と教えてくれた。ハウス内には、いつでも気温や地温、CO2濃度などを携帯電話で確認できる環境制御装置を設置し、水やりやハウスの開閉による温度管理を自動化するなど、スマート農法による効率化を図っており、農薬を極力使わないよう、イチゴの大敵ハダニ駆除に天敵を放つ、ハウスの保温には灯油暖房ではなく、ウォーターカーテンを取り入れるなど、環境にも配慮している。さまざまな取り組みを行いながらも「もっとやれることがあるはず」と小山さん。イチゴ作りへの情熱はとどまることがないようだ。
 そんなこだわりのイチゴを使いタルトを作るのは、開店一周年を迎える「メテオール」の菊池侑介店長。ショーケースには地元農家から毎日仕入れる大粒イチゴを使ったケーキが並ぶ。「食べ比べても地元のイチゴが一番おいしい」と菊池さんは言う。厳選素材で作るしっとり感が自慢のスポンジと、配合にこだわった生クリームに大粒のイチゴ。王道にして至高のスイーツに違いない。

パック詰めにも機械を導入し、スタッフの負担を軽減している。規格外のスカイベリーをあぜみちでは「いちご」として販売しているのでチェックしてみて。

NANTAIファーム 福島 章生さん見た目も味わいも特別な平飼い鶏の絶品卵

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 日光宇都宮道路大沢インターチェンジからほど近い山裾に、今年オープンしたNANTAIファーム。豊かな自然の中、400羽のボリスブラウンと100羽の東京烏骨鶏を平飼いで育てている。養鶏場を任されているのが福島さんだ。「入社するまでペットを飼ったこともなく、大丈夫なのか不安もありました」。一からすべて手探りの状態、周囲の有識者からアドバイスをもらいながら、試行錯誤を重ねてきた。「戸惑うこともありますが、とにかく鶏たちがかわいいです」と目を細める。
 NANTAIファームの鶏たちは、砂遊びをしたり爪とぎをしたり、自由な環境の中でストレスなく育てられる。餌は良質な魚粉や、抗酸化作用のあるアスタキサンチン、ルテイン、カキ殻、貝の化石などを独自で配合し、水は塩素などを含まない地下水を与えている。恵まれた環境で産まれる卵は、割ると違いが一目瞭然。「手でつまめるほど弾力があり、かき混ぜても黄身と白身がなかなか混ざらない」という。味ももちろん別格だ。特に甘みがある白身が特徴で「卵かけご飯で味わってください。違いがわかります」と胸を張る。9月に烏骨鶏のヒナ100羽が新たに仲間入りし、ますます多忙な福島さん。鶏へ惜しみない愛情を注ぎながら、さらなる高品質な卵を生産するため、試行錯誤はまだまだ続きそうだ。
 そんな卵のおいしさをダイレクトに感じられる料理として『ふわとろ♪たんぽぽオムライス』を紹介してくれたのは、ハンバーグなど肉料理が人気の「りべるた食堂」。卵は「黄身の色味の美しさとコクで選ぶ」という坂田 剛シェフ。ふわりとした食感と濃厚な味わいは、寒い季節にほっこりとやさしい気持ちを運んでくれる一皿だ。

敷地内には直売所もあり遠方から購入に訪れるリピーターも増えているという。鶏たちは福島さんになついており、一斉に後をついて鶏舎内を歩く様子は圧巻だ。

58ロハスファーム 伊東 一寛農場長個性的なイタリア野菜をオーガニックで栽培

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 58ロハスクラブがゴルフ場だった時代、レストランでおいしい野菜を提供したいと、敷地内に自社農場を作ったのがロハスファームの始まり。施設は形を変えたが農場はそのまま、イタリア野菜を中心に個性的なオーガニック野菜を栽培し続けてきた。「遠方から野菜を買うためだけに来てくれる人がいる。おいしいと言ってもらえるのが、何よりのやりがいですね」と農場長の伊東さん。ロハスファームには、矢板市と塩谷町の2カ所に農場があり、伊東さんは塩谷農場で主にトマトとイチゴを栽培している。塩谷農場は、もともと河川敷だったため水はけがよく、トマトの栽培に適した環境。肉厚で甘く特に人気が高い『トマトベリー』や『フルティカ』など5~6種類のトマトをほぼ通年栽培している。
 また矢板農場ではカリフラワーに似た『カリフローレ』や、丸い形の『イタリアナス』など、個性的な野菜が種類豊富に栽培されており、冬は『ロイヤルクイーン』という珍しいイチゴが最盛期を迎える。「女峰を開発した赤木さんが開発したイチゴで、実の中まで真っ赤。本当においしい」と伊東さん。市場には流通しない幻のイチゴだが、ここでは摘み取り体験ができ、直売もされる。あぜみちではロハスファームのブルーベリーやイチゴを使ったジャムを販売。粒が残るぜいたくな味が楽しめる。
 一方、「紫塚ゴルフ倶楽部レストラン」では、ロハスファーム自慢のトマトを使ったメニューが、朝食ビュッフェで提供されている。首都圏から訪れるゲストに、新鮮な地場野菜たっぷりの料理は大人気。「ロハスファームのトマトは実がしっかりしていて甘いですね」と料理長の渡辺さん。プロの技でさらに味わいを深めるトマトを、リッチな雰囲気のなか堪能したい。

親子2代でトマトづくりを続ける伊東さん。たくさんの愛情を受け育ったトマトは、真っ赤な宝石のように美しい輝きを放つ。

直井果樹園 直井 透さん昭和天皇にも献上された甘くみずみずしい完熟梨

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 大正3年創業、宇都宮市の東部に広がるのどかな田園地帯にある直井果樹園。三代目の直井透さんは、妻の光子さんと二人三脚で梨を栽培している。「うちは目が行き届く広さの農園だから、ホルモン剤なども使わず自然のままに育てています」と透さん。ホルモン剤を使うと実は大きく育つが、自然に育った梨とは甘さが違うのだそう。有機肥料100パーセント、除草剤は使わず、草刈り機で刈り取り、刈り取った草は土に帰し肥料としている。農薬も極力使わないため、虫や病気には特に気を遣うそう。「病気などは早く見極めて対処しないといけないので気が抜けない」というが、そこに対応できるのは透さんの長年の経験があるからこそだ。かつては、昭和天皇が那須の御用邸で夏の静養をされるときは、必ず梨を献上していたということからも、その品質の高さがうかがえる。「毎年遠くからわざわざ買いに来てくれる常連さんもいるし、知り合いの梨屋が食べたがるんだよ。だから辞められない」と目を細める透さんを「リアルマリオみたいでしょう?」と笑顔で紹介してくれたのは次女の直美さんだ。現在は農業大学校に通い、農園の敷地の一角でオリーブやカボチャの栽培を行っている。透さん自身が「うちの梨は自分で食べてもおいしい」と胸を張る、愛情たっぷりに育てられた自慢の梨を、ぜひ味わってほしい。
 一方、直美さんは『宮ぴくるす』の製造にも携わる。直井果樹園の梨を使った『梨のぴくるす』は、今年から販売開始される新商品だ。「栃木のおいしい梨をあらたな形で提案したい」と話すCooking & Glow代表の金原 恵美さん。梨の歯ごたえや爽やかな甘みを消さないよう試作を重ねたという。梨の新たな味わいを楽しんでみては。

直井果樹園の完熟梨は「あぜみち」上戸祭店・駅東店のほか、果樹園の直売所でも購入できる。毎年ファンが待ち望む味をご賞味あれ。

黒川梨園 黒川 伸介一さん市街地近くの農園で糖度の高い完熟梨を栽培

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 宇都宮市中心部から国道123号線を東へ向かい、鬼怒大橋を渡り終えたところ、道の両側に広がる梨畑が黒川梨園だ。一町二反の広さを、両親と奥様と、家族4人で手がける。取材時は「幸水」が実をつけ始めたばかり、8月下旬には「豊水」が最盛期を迎える。街なかでの梨の栽培は難しいのでは?と質問すると予想外の答えが返ってきた。「ここはもともと鬼怒川の河原だったところで、少し掘ると砂が出てくる。お陰で水はけがとてもよいですし、畑の横を大きな道路が通っていることで、車が風を作り空気を循環してくれるので、冬の寒さが和らぎ、霜の被害を受けにくい。実は梨の栽培にとても向いている土地なんです」そう教えてくれた。「梨農家は冬は暇なんでしょう?とよく言われるんですよ」と笑う黒川さんだが、実は一年中多忙だ。冬場は枝を剪定し、高く伸びすぎないよう横に這わせる作業を行う。たくさん枝を残せば梨の収穫量は増えるが、黒川さんは太陽の光が実にしっかり届くようにと間引く。そして夏場は灌水。水はけが良い土地ゆえ、水の管理には特に気を遣うそうだ。そうしてたっぷりの愛情を受け、樹上で完熟した梨は格別の味わい。毎年、遠方から訪れるリピータ―も多いという。これからの時期は、贈答用「にっこり」の予約も始まり、まだまだ繁忙期が続きそうだ。
 そして、毎年この時期になると梨を使ったケーキがショーウインドウに並ぶのは、宇都宮の人気洋菓子店『S・ナカヤマ』。水分が多く生菓子には向かないと言われる梨だが、軽く煮たり、ゼリーでコーティングするなど工夫を凝らし、梨の食感を崩すことなく新たなおいしさを提供している。季節限定商品のため、購入に訪れる際は事前に確認するのがおすすめ。

自慢のおいしい完熟梨は、直売所と「あぜみち」各店で購入できるほか、FAXでの注文も可能(090-8815-8885まで、事前に問い合わせを)。出荷準備を担当するのは奥様とお母さん。あ・うんの呼吸で作業が続く。

農業生産法人 株式会社 いわふね農園 樋渡 裕一さんホウレンソウを通年栽培いつか岩舟ブランドに!

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 栃木市内で唯一、通年でホウレンソウを栽培している「いわふね農園」。樋渡さん一家は、福島県から6年前に岩舟に移住、土づくりや35棟あるハウス・ネットの設置、水路整備など、すべて自力で作り上げてきた。もみ殻やたい肥を二次発酵した有機肥料を使用、種も時期に合わせ使い分け、地下水から徐鉄するためのフィルターを設置するなど、さまざまな改良を行ってきたが、一番大切なことは「ホウレンソウと話をすること」だという。「元気ないけどどうした?とか毎日話しかけると、わかることがたくさんある」と話す。「ハウス栽培は成長速度を調整するのが難しいんです」。苦労もあるが「野菜嫌いのお子さんが、うちのホウレンソウなら食べる、などと聞くとうれしくて」と笑顔で話す樋渡さん。いわふね農園のホウレンソウは、愛情をたっぷりに育てられている。
 一方ハウスの傍らでは、夏場はカボチャ、冬場はブロッコリーも栽培されている。福島での農業時代と同じ品種を育てる樋渡さんの中には、変わらない福島愛がある。「私が育った地区には“岩船”という地名があって“大平山”もある。不思議な縁を感じています」と話す樋渡さん。第二の故郷・岩舟町のために、若手農家に指導を行い技術を惜しみなく伝えている。今後は、地元の農家同士で連携しながら、岩舟ブランドを立ち上げるのが目標だ。
 そして、同じ岩舟町にあるA5ランク和牛の焼肉専門店「松喜」でも、地元産のホウレンソウやカボチャを使ったメニューを提供している。「岩舟エリアで育てられる食材のおいしさを、お客様に伝えたいです」と、松井オーナー。その日一番のやわらかく脂がのった肉と新鮮な地元野菜、暑い夏を乗り切るパワーチャージに訪れたい。

ハウスの中では、時期をずらし栽培されているホウレンソウが常に出荷できる状態で待機。夏場の暑さ対策には断熱ネットを使用

株式会社 大三 小松 大起さん就農して13年目若い力で大規模農場を経営

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 下野市内に約3万坪、ハウスだけで1万800坪という広大な農地を所有し、年間を通してホウレン草や小松菜、ナスを中心に多くの野菜を栽培している株式会社 大三。代表を務める小松さんは「自分が農家になるなんて思っていなかった」と笑う。実家は非農家の自営業で、社会人となった当初は家業を手伝っていたが27歳で退職。何をしようか考えた時、自然と触れ合うことができる農業に魅力を感じ、一から取り組むことを決めた。当時はリーマンショック後の第一次就農ブーム、県農業大学校の未来塾を卒業後、新規就農者支援事業を利用し、下野市に農地を借り、最初の一歩を踏み出した。その後「失敗もたくさんしつつ(笑)」今年農園は13年目を迎えている。「育て方が違う多くの野菜を栽培していくには、たくさんの知識と経験が必要です。植え付け時期、水や肥料の与え方など試行錯誤を続けてきました」と話す。たくさんの苦労がある中でも『野菜作りと人づくりに愛情をかけること』は決して忘れない小松さん。農園のスタッフは20名以上、海外からの技能実習生も多く、少しでも楽しい環境で働いてもらいたいと、小松さん自らハンドルを握り、スキーや登山に連れ出すこともあるという。そんな愛情あふれる経営者のもと、まだまだ成長し続ける、農園の今後が楽しみだ。
 そんな大三自慢のナスを使った創作フレンチを作り上げるのは、ビストロウエノのオーナーシェフ上野 剛さん。「水分がしっかり詰まった上質なナスだというのは、手に持っただけでわかりますね」と評価は高い。「これからの季節、どんどんおいしくなるナスをぜひ味わってください」。ナスを使った夏限定メニューはほかにも多数。ゆっくりワイン片手に味わいたい。

収穫が始まったばかりのナス。苗は大人の背丈を超えるほどに成長していくそう。バイタリティと愛情あふれる小松代表。

フジワラアグリコルトゥーラ 農業アドバイザー相田 巧さん次世代農業の形を目指すオーガニック農園

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 宇都宮市北部、東京ドーム1個分という広大な敷地一面に、ソーラーパネルが並んでいる。その足元を有効活用し、土壌改良を一から行い、年間120種類ものオーガニック野菜を栽培しているのが「フジワラアグリコルトゥーラ」だ。今年2月からネット販売を開始すると「今まで食べていた野菜とは別物!」と驚きの声が上がり、すでに多くのリピーターを獲得している。「本当においしいので、一度食べてみてください」と胸を張るのは木村 理 代表だ。木村さんもスタッフも、もとは農業とは無縁。海外から来日しているスタッフもおり「彼らに技術を身につけさせ独立させたい」と木村さん。「いずれ敷地を広げて観光農園を作りたい」という構想もあるのだそう。ソーラーパネル売電と野菜栽培で収益を得、人を育てることで国際貢献の一助ともなる可能性を秘めるこの農園の形は、新しいビジネスモデルの提案にもなっているのだ。
 そんな木村さんに賛同し、アドバザーを務めるのは農業指導のスペシャリスト相田 巧さん。埼玉県から足を運び、直接指導を行っている。相田さんにとってもこの規模の農園づくりは初めての経験だそうだが「安全でおいしく栄養豊富な野菜を作り、自動化・省人化させた持続可能な次世代農業の仕組み作りに協力できたらと思っています」と話してくれた。
 四季折々たくさんの野菜が実るフジワラアグリコルトゥーラでも、人気野菜の一つがアスパラガス。宇都宮市にある健康志向のデリ専門店「FARMDELI」でもこの時期アスパラメニューが登場する。「アスパラは今が最盛期。みずみずしく甘い味わいを楽しんでほしいですね」と相馬オーナー。オーガニック野菜の力強い味わいをぜひ一度味わってみてほしい。

若いスタッフが自然本来の力を使った農業に取り組む。放し飼いのチャボや軍鶏などは除草担当。

株式会社 キヌナーセリー 齋藤 芳哲さん全国に名を知られる胡蝶蘭栽培のパイオニア

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 宇都宮市東部、鬼怒川近くに並ぶハウスに入ると、胡蝶蘭に囲まれる夢のような世界が広がっていた。キヌナーセリーが胡蝶蘭の栽培を始めたのは1973年、まだ栽培方法が確立しないなか、試行錯誤を重ね、現在、年間出荷数22万株という、全国でも指折りの胡蝶蘭栽培農家となった。通常、海外で育てた苗を輸入し、国内で花を咲かせ出荷するスタイルが胡蝶蘭栽培の主流だが、キヌナーセリーではグループ企業連携によるリレー栽培を導入。自社ですべての工程を管理し、貴重な純国産の胡蝶蘭を生産している。「胡蝶蘭は生育環境を整えるのが難しく、栽培期間も2年~2年半と長いため、高い技術が必要です。日々花と向き合い手をかけた結果が、咲いたときにわかる。そこがやりがいですね」と齋藤さん。これまでも多くのオリジナル品種を生み出しているが、現在も新品種開発を続けるなど、前進を続けている。
 一方、咲き終わった株を預かり再び花を咲かせる取り組みも行っており、全国から依頼が舞い込む。贈った人と受け取った人、それぞれの想いをつなぐ特別な蘭だからこそ長く楽しんでほしい、そんな齋藤さんの想いが伝わる。「もっと多くの人に蘭の魅力を伝えたい。身近に感じてもらう工夫をこれから考えていきたいですね」。
 そんな愛情を込めて育てられた胡蝶蘭を、母の日の贈り物として提案してくれるのは「ffHK 花亀」。「齋藤さんの胡蝶蘭は本当に品質が高く素晴らしい。日持ちもするので自信を持って勧められます」と亀井店長。「コロナ禍でなかなか会えないお母さんに、いつもよりちょっと豪華に胡蝶蘭を送りたいという方も多いです」。こんな時だからこそ「幸福が飛んでくる」という花言葉を持つ胡蝶蘭を贈ってみてはいかがだろう。

色とりどりに咲き誇る胡蝶蘭。仕上げも熟練スタッフが行う。

髙橋農園 髙橋 祐哉さん祖父の想いを受け継ぎ イチゴ農家へ転身

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 2年前まで、飲食店の店長を務めていた髙橋さん。29歳という若さで農家へ転身したきっかけは祖父の死だった。野菜嫌いだったが、祖父の育てた野菜だけは食べられたという髙橋さんにとって、祖父の畑は特別な場所。しかし祖父の死後、畑は放置され荒れていった。「自分のルーツであり、祖父が大切にしていた畑を守りたくて、農家を継ぐ決心をしました」。店を辞め、県農業大学校の未来塾で技術を学び、昨年イチゴ農家として一歩を踏み出した。とはいえ既に50メートルのハウスが8棟、新規参入としては大規模だ。「農家は家族経営が多いですが、僕は企業化したいです。そのためには年間を通しての収益が必要で、夏野菜の栽培なども考えたらこの規模になりました」。店長として培った経営者視点も役立っている。「他業種から入る僕のような立場は、新しいことにチャレンジしやすい。これから農業をやりたいと思っている人たちが働きやすい環境づくりを考えていきたいです」。
 現在栽培しているのは「とちおとめ」のみだが、いずれ品種を増やし、ハウスを増設し、市街地から近い立地を生かした観光農園のような形を作り、地域のカフェなどとコラボレーションし街を盛り上げたいと考えているそう。髙橋さんの今後の活躍が楽しみだ。  そんな髙橋農園の「とちおとめ」を使ったフルーツサンドが人気なのが、昨年オリオン通りにオープンした「茶果TEA ROOM」。「髙橋さんはいつも真っ赤に完熟した一番おいしいイチゴを届けてくれます」と荒井店長。「酸味と甘さのバランスが良く本当においしいイチゴなのでいろいろ使ってみたくなります」。イチゴと店オリジナル生クリームとの相性も抜群。至福のひとときを運ぶ一品だ。

大谷石の蔵が選果場兼直売所。大きな完熟イチゴは、温度や梱包方法までこだわった独自のマニュアルのもと管理され出荷される。

リンネ農園 仙波 洋子さん初収穫にしてこの品質!肉厚な極上シイタケ

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 農業とはまったく無縁だった仙波さんが、初めてのシイタケの栽培を始めたのは昨年6月。経営母体である仙波建設がシイタケ栽培に取り組むことを決め、仙波さんが任されることとなったのだ。すべてが初めての経験、壬生町にある菌床メーカー「株式会社 北研」の研修を受けノウハウを学び、今もサポートを受けながら栽培にあたっているという。試行錯誤を繰り返し育てたシイタケは無事収穫期を迎え、今は出荷作業の真っただ中だ。「シイタケはとても繊細で、環境が少しでも違ってしまうと思うように育ちません。ちょっとぶつかった刺激で、大量に発生してしまったり(笑)失敗もありますね」。通常シイタケ栽培は、菌床全体から発生させる「全面栽培」だが、リンネ農園では、側面をビニールで囲み、上面からのみ発生させる「上面栽培」を採用、培地中の栄養分や水分が効率よく吸収されるこの栽培方法により、大きくて肉厚なシイタケが育っている。現在、8000床の菌床が並ぶハウスが3棟、さらに1棟増築中で3万床の規模になる予定。「今後は子どもたちに摘み取り体験をしてもらえるようにして、食育にもつなげていきたいと思っています」。仙波さんのシイタケ栽培への情熱が、今後どう展開していくのか楽しみだ。
 そんなリンネ農園のシイタケを手に「本当に立派なシイタケで、いろいろな料理に使ってみたくなりますね」と話すのは「トラットリアココロ」の若色謙次シェフ。「肉厚で甘みとうまみがたっぷり。焼いても形が崩れず、ジューシーでそのまま焼くだけで十分おいしいです。本当に上質なシイタケですよ」と太鼓判を押す。リンネ農園の極上シイタケは、あぜみち上戸祭店・鹿沼店ほか、道の駅にのみややネット通販などで購入可能だ。

ハウスの管理には、湿度や二酸化炭素濃度などを自動計測し、スマホにデータを届けてくれるアプリも採用。「スタッフ全員で繊細なシイタケの環境に細心の注意を払い心を込めて育てています」。

株式会社 谷中農園 谷中 正幸さん高い糖度と強いうまみ 食べた人を魅了するイチゴ

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 いつも頭の中にはイチゴのことがある、という谷中さん。「全然関係ないことをしていても、これはイチゴに応用できるかも、と考えてしまうんです」と話す。谷中農園の三代目、二代目の父と70aの畑で「とちおとめ」「スカイベリー」「とちあいか」を栽培している。通常イチゴの糖度は10度前後だが、谷中農園のイチゴは糖度13度、濃厚な甘い味わいに、一度食べた人は口をそろえて「谷中農園のイチゴは違う」と驚く。「特別なことは何もしていません。一つひとつの仕事を、すべて高いレベルで確実に行うだけです」。イチゴという小さな植物の小さな変化を、見逃さないよう注意深く観察し、先を見越し対応を考える。当たり前のことを当たり前に行うこと、その難しさに真摯に向き合う谷中さんの姿からは、イチゴへの深い愛情を感じずにはいられない。
 今後はイチゴを使ったクラフトビールの製造などにも取り組む。「イチゴはとてもポテンシャルが高く、たくさんの可能性を秘めているんです」。新しい取り組みを先頭に立って行い、後進のモデルケースを作りたいと語ってくれた。
 そんな谷中さんのイチゴに魅せられ、ケーキ名に「谷中農園」とつけた商品を販売しているのが、栃木市の人気フランス菓子店「ソワール」の片柳店長。「谷中さんのイチゴは香り・味・こだわりが感じられ、味にブレがない。タルトのほかにも、『フレジエ・ピスターシュ』『エクレール・とちおとめピスターシュ』など、谷中さんのイチゴを使った商品がありますので、ぜひ違いを楽しんでください」。谷中農園のイチゴを使ったスイーツは、「ソワール」のほか「シャンティイ」「和菓子処 仁」「かのこ庵」でも楽しむことができるので、ぜひ食べ比べてみて。

土での栽培のほか、高設水耕栽培にも取り組む。谷中さんのイチゴは栃木市内「コエド市場」「よっとこれ」、小山市「四季彩館」、宇都宮市ろまんちっく村「あおぞら館」「あぜみち各店」などで購入できる。

田口いちごファーム 田口 友章さんその味わいに誰もが驚く概念を覆すスカイベリー

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 11月に新たに建てた選果場を兼ねた直売所をオープンしたばかりの「田口いちごファーム」。代表を務める友章さんは、建築関係の仕事からイチゴ農家に転身して10年となる。先代の父親からノウハウを学びながら、自身も「とちぎ農業未来塾」でイチゴづくりや、経営など農業の基本を学んだそう。現在は52 aの畑で、とちおとめ・スカイベリー・とちあいか・ミルキーベリーを栽培している。特に、スカイベリーについては、7年前の品種開発の段階から参加し、栽培方法の確立に貢献してきた。
 友章さんが作るスカイベリーは別格とさえ言われ、他県からわざわざ買い求めに来るリピーターも大勢いるという超一級品だ。高品質のイチゴを作り上げる秘密は「土」にあるという。「品種それぞれに合った土づくりにこだわり、有機肥料を使って栽培しています。水はけの良い畑であることも、味に締りがあるおいしいいちごを作るためには大切ですね」。こうしたイチゴづくりの確かな技術が認められ、田口さんは県知事から“農業マイスター”に認定されており、研修生を預かり農業指導を行っている。「毎年気候が違いますから、育て方も違ってきます。同業のグループで情報交換を行い、良いと聞けば取り入れたりしています」。認められて尚、試行錯誤を繰り返しさらなる上を目指す田口さん、試食させていただいたイチゴの豊かな味わいに、イチゴつくりへの情熱が感じられた。
 イチゴ王国とちぎの飲食店では、この季節さまざまなイチゴスイーツがメニューを彩る。宇都宮市にある「カフェアンフィル」では、人気の『季節のフルーツタルト』の主役がイチゴに。パティシエの技でさらにおいしくなったイチゴの味わいを存分に楽しみたい。

11月23日に新築オープンした選果場兼直売所。イチゴを買い求める客が次々やってくる。大きな実が熟してから収穫される。

農業生産法人 株式会社 篠原ファーム 篠原 和貴さん6次化にも取組む 新たな形のイチゴ農園

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 小山市にある篠原ファーム代表を務める和貴さん。「家を継いで農業をやろうとは思っていませんでした」。大学を出て一般企業に就職、農家は手伝い程度だったが、先代の父と一緒にイチゴ作りと向き合う中で、徐々に「やってみようか」と気持ちに変化が起きた。現在は、49アールあるの畑で「とちおとめ」や「ミルキーベリー」のほか、今年から新品種「とちあいか」の栽培にも着手している。
 また、経営者となった今、きついと評されがちな農業について、楽しい仕事にするにはどうしたらいいか?ここで働きたいと思ってもらうには何が必要か?を考えている。「新しく設置したハウスでは高設栽培を導入しました。立ったまま作業ができるので負担を軽減できます」。今後も環境改善を進めていくつもりだが、手を抜くことは一切考えていない。「農業は自分との戦い。手を抜こうと思えば抜けますが、その中でどれだけ手をかけられるかだと思います」。若き経営者の目は、今に満足することなく先を見据えている。  そして今月、作業場を兼ねた直売所をオープンした。「出荷するだけではわからないお客様のダイレクトな反応がわかるし、自分で作ったものは自分の手で売りたかったんです」。直売所にはイチゴを使ったジェラートが楽しめる店舗も併設している。
 一方、以前から篠原ファームでは6次化にも取り組んでおり、小山市内にある洋菓子店「シェフレ」を経営。店ではケーキなどにイチゴをそのまま使うのはもちろん、形が揃わず出荷できなかったイチゴを、ジェラートやソースとして活用している。今年は「とちあいか」を使ったメニューも考案中。今話題の「とちあいか」を、一足先にスイーツで味わってみては。

直売所横にある高設栽培を取り入れた新しいハウス。見学も可能。完成したばかりの直売所に併設されるジェラート店「いちご日和り」。

ぬい農園 縫村 啓美(はるみ)さん有機農法・有機栽培に沿う 新しい農業の形を目指す

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 栃木市北部の自然豊かな場所にあり、栽培期間中は化学農薬、化学肥料を使用しない有機農法に沿った野菜作りを行っている「ぬい農園」。縫村さんは就農して今年4年目、6面ある畑の土壌改善を行いながら多くの野菜を栽培し、農園に合う野菜を探してきた。「気づいたら150種類くらいに増えてました(笑)。今後は70~80種類に絞ろうと思っています」。収穫した野菜は、直売所や飲食店に卸すほか、野菜セットを市内の個人宅へ宅配、また自らジャムなど加工品を製造するなど、さまざまな形で販売している。そんな縫村さんの目標は、味が良いだけではなく、見た目も美しい野菜を作ること。農薬を使わない栽培は虫食い対策や除草、害獣対策など課題も多く、まだまだ試行錯誤は続きそうだが、野菜作りは楽しいと話すその表情からは、日々の充実感と、野菜作りへの熱い想いが感じられた。
 一方、地域活性化にも積極的に取り組んでいる。近所の人が集える場所の提供や直売所の開設など、過疎化が進む地域に人を呼ぶ方法を模索中だ。「飲食店ともつながりつつ、一緒に地域を守っていきたいです」。農業を通じて地域に変化をもたらせたら、との想いも語ってくれた。
 そんな縫村さんの野菜を絶賛するのは『ピッツェリア クッチーナフラテッロ』のオーナー三澤秀樹さん。「同じ材料で同じ料理を作っても、縫村さんの野菜で作るとワンランク上のできあがりになる。びっくりするおいしさです」と教えてくれた。「ぬい農園」の野菜はうまみが強く、何もせずそのまま食べるのが一番だそうだ。
 地元だから使うのではなく、おいしいから使うという、地産地消の理想的な形を実現する一皿は、今日も多くの笑顔を運んでいる。

手入れの行き届いた畑で、これから旬を迎える大根も成長中。昨年仲間に加わった農園のマスコット、ヤギの「むぎ」は除草担当。

阿久津農園 阿久津正徳さん、政英さん国内最高峰の賞を受賞 稲作のプロフェッショナル

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 黄金色に輝く稲穂が揺れる田んぼを前に、「今年もいい米ができたと思います」と笑顔で口にする阿久津農園5代目の政英さん。日本最大のコンテスト「米・食味分析鑑定コンクール 国際大会」で、過去5年で4度の受賞実績があったが、昨年ついに最高部門の国際総合部門で“特別優秀賞”を受賞。「死ぬまでに一度は受賞したい」と夢見た賞を手にし、米どころ大田原市でも一目置かれる存在となった。
 ナスの栽培を手掛ける父正徳さんと、団体職員として勤務しながら、出勤前と休日を使い米づくりに携わる。二足のわらじを履いても、農業は楽しいという。特にこだわるのは苗づくり。阿久津さんは試行錯誤の末、発芽後すぐに緑色の芽を出す強い苗の栽培に成功。発芽後もハウスではなく、路地栽培でゆっくりと病気に強い苗を育てている。こうした独自の取り組みにリスクは付き物だが、それでもさらなるチャレンジを続けている。「おいしくて健康に良いお米を目指し、これからも追求していきたいです」。阿久津さんの言葉からは、米づくりへの強い情熱が伝わってきた。
 そんな阿久津さんのお米が食べられるのは、宇都宮市にある人気店「和食 了寛」。「阿久津さんの米は炊き上がりの香りが最高です。米肌がよく一粒ずつが立っている。甘みもあり、冷めてもおいしいですよ」とオーナーの田巻さん。土鍋で炊いた味わいはまた格別で、つやつやとした光を放ち、白飯だけでも食が進む。まさにプロも納得の“うまい飯”なのだ。
 阿久津さんの米は、あぜみち鹿沼店と下戸祭店で購入できる。店に並ぶと途端に売り切れてしまう人気だ。新米の季節、秋の味覚とともに、本当においしい米を味わうぜいたくを堪能しよう。

黄金色に輝く美しい稲穂。まもなく収穫を迎える。

3代目 阿部農園 阿部祐一さん生産の快適化を目指す高品質なリンゴ栽培

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 御伽話に出てきそうな、独特なフォルムのリンゴの木。「白雪姫に出てくる毒入りの果実は、なぜリンゴだったのか?」のアンサーが、「作者が個性的な木の形にインスパイアされたから」との解答だったら、至極納得できる。
 「低い位置に実がなるように、あえてこの形に剪定をしているんですよ」と阿部祐一さん。宇都宮市の日光街道沿いにある観光農園「阿部農園」の3代目として、昨年父から家業を引き継いだ。リンゴ狩りができる品種は「津軽」「名月」「秋映」「陽光」「ふじ」の5種類。この畑のほか、近隣に6カ所の果樹園を持つ。全耕地面積1ヘクタールを、両親と祐一さんの3人で管理。品種により収穫時期が変わるとはいえ、摘果や剪定作業は同時期に行わなければならないため、スピードが求められる。「低位置に枝があれば作業効率が上がります。剪定により収量は減りますが、取り遅れなどがなくなるため、品質は向上する。なので、お客様には喜んでいただけると思います」。加えて、年齢を重ねた両親が仕事をしやすくなることもポイントだという。収穫時のカゴの重さは約5キロ。脚立での作業が減れば、身体への負担も軽減する。「今後は植え替えを行っていきたい」と語る祐一さんの目標は、高品質なリンゴ栽培と、労働環境の整備だそうだ。
 リンゴとフォアグラとの相性の良さをタルトの形で表してくれたのは、同市内にある「天空ダイニング Regalo」の鈴木シェフ。リンゴの甘みと酸味が、濃厚なフォアグラと鶏レバーの味わいに寄り添った、個性的かつ趣深い一皿を完成してくれた。
 食材の可能性は無限大。新しい味との出会いは、私たちに喜びを与えてくれる。

7月下旬の様子。まだ青い部分が多い。これから色付き始め、8月下旬から順次販売予定。農園には樹齢30年を超える木も。

岡田ぶどう園 岡田貴志さんブドウの品種に適した 栽培方法で高品質な商品を

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 時は約70年前に遡る。貴志さんの祖父が野菜の生産を営む傍ら、敷地にささやかに植えていた1本のブドウの木。ここから岡田ぶどう園の歴史は始まった。ブドウの生産を本格的に行おうと、2代目園主が栽培規模を拡大。小規模だったブドウ畑は、今や130アールもの敷地で10品種以上を育てるまでになった。近年は、早期成園化・多収・軽労化・土壌病害対策など、たくさんのメリットがあるとされる「盛土式根圏制御栽培」を取り入れ、新しい農法にチャレンジ。ほか、暖房設備を完備したハウスの中では「短梢剪定栽培」を、斜面の土地では昔ながらの「露地栽培」を行うなど、栽培方法が実に多様だ。ハウスと露地で育てる品種の違いを聞いてみると、「昔からある品種は昔ながらの栽培方法で行っています」とのこと。露地栽培は雨ばかりだと黒とう病が発生したり、ハクビシンやアライグマによる被害に遭うこともあり、リスクが多い。そんなときに頼りになるのが、愛犬のベルとレオン。夜間は露地畑で過ごし、野生動物からの被害を守ってくれるそうだ。
 「岡田さんとは創業当時からのお付き合いをさせていただいてます」と教えてくれたのは、下戸祭にある「下野農園」のブランドマネージャー・玉井育子さん。“こだわりを持って生産された農畜産物を、多くの人に楽しんでもらう”をコンセプトに掲げ、地元食材の持ち味を存分に生かした料理を提供している。今回作ってくれた料理は、8月からのディナーコースのデザートとして考案された季節限定の一品だ。岡田さんが作るブドウの豊潤な味わいは、スイーツのおいしさを一段上に引き上げる立役者となっている。
 この時期限定の料理から、夏を感じてみてはいかがだろうか。

樹齢20年を超えるぶどうの木。1本の幹から広く伸びた枝にたくさんの果実が。

下川雅紀•下川明日香さん栄養豊富な生キクラゲを 那須ブランドで全国に

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 那須高原の木立に囲まれた、避暑に最適な立地に佇む“コンテナホテルに滞在”するのは、なんと「生キクラゲ」。「ものすごくワガママなんです、この子たち」と笑顔で話してくれたのは、昨年から生キクラゲの栽培を始めたという下川明日香さん。夫の雅紀さんと二人三脚で、「完全無農薬・通年室内栽培」を行う。コンテナ内は、室温、湿度、紫外線量を徹底管理。それらのデータはスマートフォンで確認ができるそうだ。ミストの噴出時間もタイマーで設定。ハイテクノロジーな技術を随所に取り入れながら、生産を行っている。
「キクラゲは90パーセントが水分のため、“いい水”がたくさん必要なのですが、水が当たるのを嫌うので、世話が大変なんです」。繊細な特性から、水やりは「一定方向から表面だけに」が鉄則。そして適宜、乾燥も必要だという。「重なり合うようにして生えるのですが、上側を早く収穫しないと下側が歪になる。本当に“ワガママ”ですよね」。土壌菌に冒されないよう、手と靴底の消毒も徹底。“手がかかる子ほど愛おしい”というような、温かな親心で見守り、栽培する姿が印象的だった。
 同市内に「旬味酒彩れん」を構え、生ゆばや生ドレッシングの工房も持つ料理長の原田哲典さん。20年にわたり、都内の料理店や那須の割烹旅館で磨き上げた腕を携え、21年前に自身の店を開店した。「生キクラゲ」を探し求めていた時に下川さんを紹介されたのが縁の始まりだとか。「下川さんの商品は歯ごたえが抜群。肉厚で最高です」。幅広い人脈を生かし、多くの料理人にこの生キクラゲを紹介。それにより恵まれた数々のつながりに、下川さんも感謝しきりだという。
生キクラゲの絶品料理を味わいに、この夏は那須に足を運ぼう。

2コンテナずつ成長速度を変えて育成。子どもたちも収穫を手伝う。生キクラゲは美顔用ブラシで丁寧に洗浄。乾燥は天日で行う。