農家紹介

農産直売所「あぜみち」にご提供いただいている農家さんや、あぜみちで取り扱っている季節の野菜を使ってくれているお店のご紹介です。

お知りになりたい農家さんを選んで下さい。

0から農業 佐々木皓宇さん 宮本大暉さん

+

農業開始2年目の冬は希少「とちひめ」栽培も成功

寒暖差のある日光の地の利を生かしたイチゴ栽培を行う、佐々木さんと宮本さんの幼なじみコンビ。農家の家系ではない2人が、「農業の会社を作ろう!」と一念発起して、自前のハウスを構えたのは、2022年春のこと。栽培のノウハウを学んだとはいえ、ゼロから出発した1年目は、実成りに苦戦。成長が芳しくなく、販売できたのは3割ほど。味は良かったが、収穫期も遅くなり、不本意な結果に終わった。しかし、2年目の栽培は大成功。1年目には未完だった自作ハウスも完成。そして、土と肥料がなじみ、土壌が整ったことで収量も品質も満足のいくものとなった。このうれしい成果は、イチゴの光合成を促す機械や自動給水システムなどの設備を導入したところも大きい。昨年は「とちあいか」のみの生産だったが、今年は「とちひめ」の栽培にも成功。ヘタの内側まで赤く染まった完熟の状態で収穫して販売できるのは、「採れたてを直売できる」という環境に恵まれているから、と話す佐々木さん。今年は直売所も開設し、2人の躍進は止まらない。

1農業を始めるため、農業大学校で学び、イチゴ農家に弟子入りして技術を修得した2人。2デリケートゆえ、市場流通が難しい「とちひめ」は、「あぜみち」で購入可能。3農園に開設した直売所。4二酸化炭素を作り出し、光合成を促進する「ダッチジェット」。5自動散水、液体肥料の制御が行える電磁弁の導入で作業効率が格段にアップ。

とちぎ夢アグリ

+

仲間と無理せず行う農業は、まさに「大人の部活動」

栃木県農政部のOBを中心に結成された「とちぎ夢アグリ」。農政部職員として勤務していたころ、使われていない荒れた農地を見ては活用方法を考えていたというリーダーの吉沢さん。退職を機に、耕作放棄地を活用して仲間たちと農業を開始した。メンバーは総勢8名。活動は、月に10日前後。作業予定日を決めて、その日に参加できる人が来て作業をするというスタンスだ。「定年後だし、のんびり活動したい」と、皆で集って行うこのスタイルを、「大人の部活動」と絶妙な表現で言い表す。作る野菜は、サツマイモを中心に、ニンジン、ダイコン、サトイモ、ジャガイモ、カボチャなど、根菜が主。瓜科野菜も育てたが、成長速度が早いため、自分たちのペースにはそぐわない、と判断。ゆっくり成長する作物を〝見守り、育む〞という速度感が「自分たちらしい」と決して無理はしない。時には収穫体験を催し、子ども達に野菜作りの面白さを伝える活動も行う皆さん。農業を楽しむ姿が、子ども達に夢を与えている。

1取材日に作業をしていた「とちぎ夢アグリ」のメンバーの皆さん。2なめらかな食感と甘さに定評がある「シルクスイート」。3つるを刈り取った後、マルチフィルムを剥がしてイモを掘り起こす。掘りたては鮮やかなピンク色。4土おこし〜マルチフィルム掛けまで行う汎用管理機「ヤンマーYK750MK」。5サツマイモの後はニンジンを収穫。

YORI ちゃんファーム 酒寄 豊さん

+

見た目にとことんこだわったおいしい大きなホウレンソウ

買い手のことを考え、見た目、食味の良さへの探求に余念がない酒寄さん。「ホウレンソウは少し大きめなのが一番味がいい」という事実を知り、実際に作って食してみたところ、これまで育てていたホウレンソウとの味の違いに驚愕。「ホウレンソウのポテンシャルを最大限に引き出したサイズで出荷したい」と、栽培するのはやや大きめのサイズ。スラリとした背丈で、葉がスッと伸びた様は、袋に収まる姿もうつくしい。この整った形は、「お金を払って購入していただくものだから、キレイなものをお渡ししたい」という購入者への心配りから生まれた、酒寄さんの美意識。その信念を貫くために、収穫時刻はホウレンソウが起立する、夕方5時以降。毎日、夜の10時頃まで作業を行う。姿形と同様に気を配るのは、味の良さ。年に1度土をほぐして、根が張りやすい環境を整える。米ぬかに数種類の菌を混ぜて育み、土を育てる。いい土壌がホウレンソウに与える影響は、食べれば一目瞭然だ。

1YORIちゃんファーム代表の酒寄豊さん。240cm以上の大きさが特徴のホウレンソウ。直立状態のものを出荷するために夜に収穫を行う。3ハウスは豊さんが、露路栽培はお父さんが育成管理している。奥の山も所有地。4「向井工業種まき機ごんべえ」で種まき。作業効率が抜群。5黄緑色の葉がきれいな小松菜「スカイホワイト」も栽培。

秋山敬一郎さん

+

土地の利を生かして生産する希少なサトイモ「善光寺」

鹿沼市花木センターからほど近い、田園地帯の一角。大きなハート型の葉が生き生きと茂る畑、そこが秋山敬一郎さんのサトイモ畑だ。栽培する品種は「善光寺」。「幻のサトイモ」と呼ばれるサトイモを、40アールの畑で栽培する。秋山さんは今年で就農3年目。昔から食に関心があり、大学卒業後は宇都宮市にある「IFC栄養専門学校」で専門知識を履修。その後、飲食店や業務用食品卸の仕事に従事していたが、農業に魅力を感じ、とちぎ農業未来塾での研修に参加した。在学中に、上都賀農業振興事務所から紹介された農家さんの元で農作業の手ほどきを受けつつ、就農を開始。現在は、その時からお世話になっている農家のダイコンの作業を手伝いながら、譲り受けた種イモでサトイモ作りや、ネギやオクラの栽培を行っている。 「より土地にあった野菜の育て方を学び、この土地に適した野菜を作りたい」と秋山さん。通気性、保湿性などに優れた鹿沼土ならではの野菜作りで、私たちの食卓を豊かにしてくれる。

1鹿沼市茂呂にある秋山敬一郎さんのサトイモ畑。畑の保有面積は全部で50アールほど。そのうち40アールでサトイモを、1 0アールでネギを作る。2サトイモの品種は「善光寺」。ねっとりとした食感が特徴。3大きな葉が特徴的なサトイモ畑。今年は11月に出荷予定。4種芋の周りに小芋がぎっしり。5味がいいのは、丸くて大きいもの。

合同会社 マルホファーム

+

農業の後継者不足を解決する就労継続支援事業所の努力

廃校となった大田原市立川西中学校を利用し、2017年から就労継続支援A型事業所である「ポラリス」を運営する、一般社団法人無邪気。マルホ建設株式会社を母体に持つこの施設では、地域課題を潜在的な人的資本で解決する取り組みを行っている。「この地域では、農家さんの高齢化と後継者問題が課題となっています。また、障がいを持つ方たちの働く場が少ない、ということも課題に。それならば、障がいのある方たちに農業を手伝ってもらうのはどうだろう、と始まったのがこの取り組みです」と教えてくれたのは、新規事業部部長の川嶋貞臣さん。そうスタートを切った本事業も、今ではネギ、ナス、ホウレンソウ、サツマイモ、ショウガを栽培。また、耕作放棄地になっていた茶畑の再生も手掛けるようになった。所有農地は全部で5町歩ほど。現在では活動が周知され、「農地を使ってくれないか」と連絡も入るそうだ。後継者問題と障がい者雇用が同時に解決できる取り組みに、次世代農業の姿が見えた。

1ナス畑は8名の従業員のうち4名で管理を行う。障がいの有無に関係なく生き生きと農作業に励む。2ころんとした姿が愛らしい、サントリーの『丸なす』。3「ポラリス」が入る旧大田原市立川西中学校。45月に植えて7月~9月、10月頃までが収穫時期。今年は有機肥料で栽培。1日に150kgほど採れる。5高貴な色のナスの花。

関戸農園 代表 関戸孝之さん 長男 聖さん

+

市貝町の伝統農法で栽培する夏秋と抑制「こく旨」トマト

市貝町で代々伝わる作型である、 夏秋トマトと抑制キュウリの交互 作。両親から受け継いだこの栽培 農法で、夏秋トマトの『麗月』を 生産する。「トマトは夏野菜なのに、 暑さと強すぎる日差しにとても弱いんです」と教えてくれたのは、 同農園代表の関戸孝之さん。トマ トの生育適温は25度から28度。 「地球沸騰化」は人間のみならず トマトにもハードなため、今年から はハウスの屋根に「白の寒冷紗」 を採用。これまで使用していたシ ルバーの寒冷紗よりも熱がこもり にくく日除け効果も抜群で、より 品質の良いトマトが収穫できるよ うになったそう。「一度でも味が良 くないトマトを作ってしまえば、う ちは淘汰されてしまう。気の抜け た仕事をしてはいけないと、息子 と話をしています」と孝之さん。 商品を購入してくれるお客様がど んな商品を求めているかを考えて、 勉強をし続けることが大切と、栽 培哲学と技術を聖さんに継承中 だ。その熱意はトマトのうまみへ と変わり、私たちの元に届いている。

1関戸農園代表の父・関戸孝之さんと 後継者の長男・聖さん。2甘みと酸味 のバランスが良い大玉トマトの「麗 月」。3白の寒冷紗を施した雨除けハ ウス。夏場は夏秋トマトと抑制キュウ リを単棟ハウス35棟で栽培する。4 1つの房に6個~8個の花が咲き、ひ と苗で約50個の実がなる。5ほんの りと赤く色づいたら収穫どき。

石下 琢朗さん

+

手を掛けるほどおいしくなるメロンに注ぐ、精一杯の愛情

肥料の入れ方、水あげのタイミングなどを一歩間違えると、大きくひび割れしたり、表面の網が太く変形したりと、とにかく繊細な メロン。「簡単に作れない、というところに魅力を感じます」と笑顔 で語る石下さんは、メロン生産1 年目。「メロンは手をかけるほどお いしくなり、見た目も良くなる。 だからこそ手間をかけて栽培して成長を見守りたい」と果肉に触れる手が、実に穏やかで印象的だ。 石下さんは、高校卒業と同時に滋賀県にある「タキイ研究農場付 属園芸専門学校」へ進学。2年間農業を学び、3年目からはメロンの知識を深めるため、同社に入職 し研究農場で品種開発に従事した。昨年、そこで学んだ事を活かそうと、帰郷して就農。両親が所有しているハウスを譲り受け、メロン栽培を開始。昨年 12 月に蒔いた種は立派に成長し、今春に収穫の時 期を迎えた。次の収穫は10月頃。7月末から種を蒔く予定だ。果実のおいしさは生産者の愛情 の賜物。メロン栽培に込められた、作り手の思いも一緒に味わおう。

1メロン栽培1年目の石下琢朗さん (24歳)。2赤玉の「クインシーメロ ン」。ほかにも、「ロイヤルレッド」や 「アースロイヤル」、試作で「グラシア」 などを栽培。今季は赤玉300個、青玉 300個を生産。3竹林の横の高台にあ る立派なハウス。4日除けのため、ひ と玉ごとに新聞紙で覆いを被せる。5 交配時期にハウス内に放すみつばち。

合同会社Laughmensバナナ農園ラフファーム 豊田恵介さん

+

難題と言われたバナナ栽培で真岡市の新ブランドを目指す

真岡市江川のほとりにあるハウ スの中は、まるで南国。3メート ルの長さになるバナナの葉が生い 茂り、株には「とちおとこ」と名 付いた果実がたわわに実る。  バナナ農園ラフファームを管理 するのは、豊田恵介さん、長谷川 優斗さん、佐藤浩映さんの同級生 トリオ。それぞれ別の仕事を持ち、 兼業でバナナを栽培する。生産し ているのは聞き慣れない「3尺バ ナナ」という品種だ。「ナスを栽培 していたハウスを借りたため、一 般的なバナナの高さ(約8メート ル)では無理でした。どうするか 悩んでいた時に、師匠から「3尺 バナナ」を勧めてもらったんです」 と、豊田さん。おおよそ 90 センチ の高さに果実が実るため、株の高 さも味わいの良さも、すべて理想 的だった。さっそく師匠から苗を 譲り受け、栽培開始。加温無しで 越冬を試みたが、あえなく失敗。 2年目はクラウドファンディング で資金調達し、ハウスを加温。無 事冬を越し、今年は豊作だ。  試行錯誤の末の傑作「とちおと こ」は、あぜみち駅東店で販売中。

1バナナ農園ラフファームの豊田恵介 さん。主にマーケティングを担当。長 谷川さんが生産管理、佐藤さんは生産 補助や営業を行う。2完熟の「とちお とこ」。3株は親株を中心に地下茎で 広がる。株は番号で管理。4ひと株に 100〜150本実り、ひと房は約20本 になる。5雌花がバナナに成長。赤い 雄花序(ゆうかじょ)も食べられる。

早乙女 直哉さん

+

ユリ収穫後の閑散期に作る希少な初夏のトウモロコシ

ユリとトウモロコシが同居する、 鹿沼市にある早乙女さんの連棟ハ ウス。4年前に父親が他界したこ とから、直哉さんは勤めていた会 社を退職し、家業を継ぐ決意をし た。両親が営んでいたのは「テッ ポウユリ」と「スカシユリ」の花 卉農家。しかし、「野菜を育てて みたら」という母の一言をきっか けに、ユリ収穫後の閑散期にトウ モロコシ栽培を始めた。現在は、 50アールあるユリ畑のハウスの一 部を活用して、トウモロコシやブ ロッコリーなどを育成している。 2月に種をまき、5月下旬から 8月上旬にかけて順次出荷される トウモロコシ。商品ラベルの「メイちゃんち」は娘の名前からとった愛しいネーミングだ。農業を始 めて良かったと思うのはどんな時 か、との問いに「野菜が得意では ない娘が「パパが作ったトウモロ コシはおいしい!」って言っても らえた時ですね」とほほ笑む姿は 子煩悩そのもの。メイちゃんも種 まきを手伝うという陽春のトウモ ロコシは、私たちにひと足早い夏 の味わいを届けてくれる。

1広告制作会社の営業から、家業の道 へと進んだ早乙女直哉さん。2大粒で 皮が薄い、スイートコーンの『ゴール ドラッシュ』。32,000粒種をまき、 1,500本ほど収穫。1本でヤングコー ンとトウモロコシが1本ずつ収穫でき る。4トウモロコシと同じハウスで育⦆ つ「スカシユリ」。5ヒゲが茶色く乾 燥し、倒れてきたら収穫のサイン。

株式会社若林ファーム 若林克成さん

+

食味の良い品種のみを選び「農福連携」の力で生産

下野市薬師寺の田園地帯。6棟 が連なるハウスの中で「ブルーム きゅうり」を生産する若林さん。 2011年3月に前職の営業を退 職し、家業を継ぐことを決断。両 親が管理していた5反のハウスと 100アールの畑は、今では約8 倍の広さに拡大。現在は東京ドー ム2個分の総敷地面積の畑を持つ。 収穫時期をずらして苗を定植する が、収穫量が増える季節には人員 不足が課題に。そんな折、障がい 者施設から「農福連携」の話を受 けたことをきっかけに、障がいを 持つ人々を積極的にサポートする ことを決意。繁忙期には大きな戦 力となっている。  「子どもが食べてもおいしい野菜 を作る」をポリシーに、食味の良 さと品質に妥協をしない若林さん。 品種選定を徹底的に行い、有機栽 培で野菜を育てる。おいしさを追 求した結果、キュウリは「ブルー ムきゅうり」を選択。「ブルームレ スきゅうり」より収穫量は減るが、 質は段違いだ。これからが収穫の 最盛期。店頭で見かけたら、ぜひ 味の違いを確かめてみて。

1株式会社若林ファーム代表・若林克 成さん。キュウリ、ホウレンソウ、カブ、 ピーマン、ニンジンなどを生産する。 2皮が薄くて、食味が良い「ブルーム きゅうり」。"ブルーム"とは、きゅう り全体を覆う白い粉のこと。3自治医 科大学近くの農園。4花の根本に小さ いミニキュウリがついた雌花。5夏場 の最盛期には1日2回の収穫を行う。

渡辺 伸一さん

+

独自の方法で育てる春の味わい山菜「山ウド」

鹿沼市西部の田園地帯に突然出 現する、トタン板の丸い枠が不規 則に並ぶ渡辺さんの圃場。「できる だけ山に自生するウドに近い条件 で育てています」という渡辺さん。 ウドは通常、室(むろ)の中の暗 黒下で栽培され、日に当たらない ため茎が白く苦みも強くないが、 渡辺さんのウドは太陽の光をたっ ぷりと浴びて育つため、緑色で山 菜特有のしっかりとした苦みと濃 い香りを持つ。見た目も味わいも 違う野性味あふれる渡辺さんのウ ドを、毎年楽しみに待つ人も多い。 冬季、ウドの根の周囲をトタン の枠で囲み、もみ殻をたっぷり被 せる。冬を越し春先に発芽、2メ ートルほどに成長する4〜6月に なると収穫が始まる。「もみ殻の厚 さで芽が出るタイミングが変わる ので、同じ時期に一気に育たない よう厚みを調整しています」。2年 かけて苗を育て3年間収穫し、5 年で苗を入れ替える。一つひとつ が手作業、手間をかけ育てられる 春の味が、店頭に並ぶのはもう間 もなく。春の訪れを感じつつ、ありがたく味わいたい。

1地域の自治会長も務める渡辺さん。 稲作・ウドのほか林業も兼務する。2 スーパーに並ぶウドとは違う濃い緑色 が山ウドの特徴。3まだ発芽前の苗。 (3月上旬撮影)44カ所10haの圃場が あり、それぞれ収穫時期をずらして苗 を配置している。5購入できるのは4 月~6月の限られた期間のみ。お見逃 しなく。(あぜみち全店で購入可)

松本農園 松本朋文さん

+

甘み・うまみがたっぷり歴史ある「新里ねぎ」

宇都宮市の北部、新里町で江戸時代から栽培されてきた「新里ねぎ」。この地域特有の冬の日夜の寒暖差により強い甘みを持ち、成長途中で横倒しにし曲げるという独特の栽培法で育てられることで、白身の部分が多く柔らかいのが特長。農林水産省選定のGIに登録されており、組合に所属する16軒の農家のみが生産できる「新里ねぎ」は、高品質で希少なネギだ。 松本さんは、2年前に父から農園を引き継ぎ、他の野菜を栽培しながら新里ねぎの栽培面積を増やしてきた。「先人が守ってきた歴史ある新里ねぎを絶やしたくないし、もっと多くの人に知ってもらいたい」と話す。2月に種をまき12月の収穫まで約一年かけ育てる「新里ねぎ」。在来種ゆえ病気や雑草に弱く手間がかかる上、生産者の高齢化もあり、現在は組合で協力しながら効率化を図り試行錯誤中だ。さらに松本さんは「首都圏などにも販路を広げられたら」と新たな展開も視野に入れている。伝統の味を守りながらチャレンジする若い力を応援したい。

14.5haの畑でネギのほか、白菜やニ ンジン、小松菜など多種の野菜を栽培。 2甘みとうまみがたっぷりの新里ねぎ。 じっくり熱を通す鍋料理などにおすす め。3曲がりネギは抜くのにコツが必 要。4小高い丘の上に広がるネギ畑。 5あぜみち全店のほか、道の駅うつの みやろまんちっく村、地元スーパーの 直売コーナーなどで購入できる。

みぶストロベリーファーム芳醇な香り・甘さ・コク 完熟イチゴは別格の味わい

+

みぶハイウェーパークに隣接し、直売はもちろん、壬生町で唯一イチゴ狩りが楽しめると人気の「みぶストロベリーファーム」。ハイウェーパークに車を停め、歩いてくる客も多いという。15棟のハウスで栽培するのは「スカイベリー」と「とちあいか」の2品種。特に「スカイベリー」のイチゴ狩りは、首都圏からの客に人気だ。さっぱりとした味わいの印象がある「スカイベリー」だが、大粒でゆっくり完熟させたこちらのイチゴは、驚くほど甘くコクがあり、概念を覆される味わい。「とちあいか」もまた、砂糖がまぶしてあるのでは、と思うほどの甘さを持ち、このイチゴを食べたらほかでは食べられない、と客に言わしめる絶品だ。「イチゴ狩りは、一度来ておいしくなかったら二度と来てくれない。だから絶対においしくなくちゃダメ」と話すスタッフ。日々イチゴを観察し、状態に合わせた多種高品質の栄養を与え、薬剤ではなく虫を使った害虫駆除を行うなど、手間や経費が掛かっても決して妥協しない姿勢を貫く。すべては「一人でも多くの人においしいイチゴを食べてほしい」という想いだけだ。「ものづくりにゴールはない。もっといいものができるはず、と常に追求しているので、気持ちが休まるときがない」と笑うスタッフ。その熱い情熱が至高のイチゴを生み出している。  そんなイチゴを絶賛するのは、宇都宮で完全予約販売のスイーツ店を営む印南千明さん。「ここのイチゴに出会っていなければ、私はケーキを作っていない」と言い、イチゴをふんだんに使ったケーキは「イチゴのおいしさを知ってほしくて作っているようなもの」だと話す。プロも認めるこのイチゴ、あぜみち各店のほか、直売、みぶハイウェーパークで購入できる。

寒暖差がある1~2月はイチゴが一番おいしい時期だという。イチゴ狩りは5月中旬まで楽しめる。

0から農業 佐々木 皓宇さん 宮本 大暉さん幼なじみ2人で始めた ゼロから出発のイチゴ栽培

+

保育園からの幼ななじみだという二人。高校・大学と別の道に進み、一旦は栃木を離れたが「一緒に何かできたら楽しいのでは?」と、卒業後地元に戻り、農業の道を選んだ。農業の知識も、経験も、土地もないという、まさにゼロからの出発。そこから二年間イチゴ栽培を学び、佐々木さんはあぜみちのインターンも経験。今年の春、晴れてスタートを切った。ハウスの組み立てや高設栽培の設備など、すべて自分たちで手づくり。何もわからず不安ばかりの日々だったというが、ここまで来られたのは「二人だったから」と口を揃える。そうして迎えた初収穫。8棟あるハウスでは「とちあいか」が大きな実をつけている。ゼロから模索し続けてきたからこそ「何もないところからでも成功できる、という成功事例になりたい」「これから農業をやってみたい若い人たちに自分たちの経験を伝えたい」と、後進の道標になるべくSNSなどでの発信も続けている。一方で農業から地元を盛り上げていく、というのも二人が取り組むテーマ。「一昨年から「ゼロからマルシェ」というイベントを地元の方と開催していて、今年は2500人を集めました」。一つの行動が周囲を巻き込み熱を生み出していく。二人の行動力は、これから地域を変えていく原動力となるだろう。  そんな二人を見守り応援しているのが日光市にあるフレンチレストラン「ジルエット」の福井慎之助シェフ。「彼らのイチゴは、瑞々しいので、スイーツはもちろん料理に合う」と、鴨肉と合わせた料理に仕立てる。「日光には頑張っている生産者がたくさんいるので、その味を多くの人に伝えたい」と話すシェフ。ともに地元を愛する若い力の相乗効果が、これからの日光を盛り上げていくに違いない。

服に描かれたキャラクターは、佐々木さんが小学生の時に描いた絵だという。2人の活動は、インスタグラム(@0karanougyou)で発信中なのでチェックしてみて。

川上 優さん母の想いを引き継ぐ畑で 夫婦が育てる大根

+

定年まで、一般企業で事務職を務めあげた川上さん。転勤族で何度も居を移したが、最後は母が暮らす那須烏山市に戻った。幼くして父を亡くした川上さんを、母は米農家として女手一つで育て上げた。そうした環境もあり、退職後は自然に畑仕事を始めた。特に農家としてやっていこう、という気構えもなかったという。「その頃母は90歳を超えていましたがまだ現役で、私が畑をやっているのを見ては指示してましたね」と笑う。その後お母様は107歳で大往生され、川上さんは畑を引き継ぎ、本格的に農業に参入した。  大根の栽培は春と夏の年2回、暑さに強く総太の「夏の守(かみ)」を育てている。そして手間はかかるが葉付きで出荷するのが川上さんのこだわりだ。価格もできるだけ安くしているそう。「だから全然儲からないんですよ」と笑う。二人三脚で従事する奥様も「こんなはずじゃなかったんですよ」と言いながら笑顔だ。利益だけを追求しない、自慢の野菜をたくさん食べてもらいたい、そんな想いが感じられる。大根以外にも川上さんが育てる野菜は実に多品種。この時期だけでも、大根・里芋・サツマイモ・人参・カブ・大豆・柿など。「いつの間にか増えちゃって…」という川上さんに「今後の目標は種類を減らすことね」と奥様。そんなお二人の素敵な関係が、やわらかく優しい味わいを持つ、川上さんの野菜に現れている気がした。  大根を使った冬の代表料理といえば「おでん」だろう。宇都宮のおでんの名店「種一本店」では、高さ10センチを超える大きな大根おでんが人気だ。一つずつ手間を惜しまない、隠し包丁など職人の技が活きる、ここでしか味わえない一品。日本人でよかったなぁとしみじみ思いつつ頬張りたい。

50mを超える畝が6本ならぶ大根畑。収穫した大根を水洗いし、きれいにテープ巻きまですべて手作業だ。

塙 朝章さん・寿枝さん家族の時間を大切にする 農業という“ものづくり”

+

ナスとトウモロコシ、ショウガを計50アールの畑で露地栽培する塙農園。主力のナスは約20アールの土地に1000本の苗を植えて栽培、1年で約8トンを出荷する。ナス栽培では王道のV字4本仕立てという支柱で育ち、アーチ状に枝が重なる畑は、実や枝の紫色と相まって少しミステリアスな、しかし生命力にあふれた場所となっている。  名古屋出身、栃木で自動車関係の会社に勤めていた朝章さんは、42歳だった6年前に就農、畑を借りてナス栽培を始めた。夫の異業種転職に妻は驚きそうだが、実は実家がナス農家だった寿枝さんはすんなりと受け入れた。台風の被害でめげてしまいそうになった時には、先輩ナス農家である妻の実家から、自然災害に対する心構えを、厳しい言葉ながらも教えてもらった。   もともと物事のプロセスを立てて考えるのが好きという朝章さん。それは野菜作りにも生かされる。いわく「車も野菜もどちらも、ものづくり。何をすればどうなるか、イメージすることは変わりません」。会社員時代と異なり、すべて自分で決められる裁量権を持てるのも、農家の良いところだと教えてくれた。さらに「特定の休みはないが、雨が降ったら家族でおでかけができますしね」。昆虫が大好きな息子さんも畑に遊びに来る。子どもの声が聞こえる所で作業ができるのは、やはりうれしそうだ。  比較的手頃な価格で手に入る、おうちごはんの味方のナスを、高級和食に昇華させるのは、宇都宮にある完全予約制のそばと懐石料理の店「喜饗」。ナスの紫色を残すため、ダシを染み込ませては二度氷水に浸すという、ていねいな仕込みを経た煮びたしは、「千両なす」の食感も生かされた繊細な味わいと美しさを兼ね備える。

野菜はあぜみち全店で購入可。塙農園ではナスを5月から11月まで栽培・出荷している。

鈴木 俊喜さんお客様の笑顔をやりがいに いつか芳賀ブランドを!!

+

近年若い世代の農家が増え、協力し新しい取り組みを行うなど、活気を見せる芳賀町で、6年前から梨栽培に取り組む鈴木さん。都内で美容院勤務、銀座の一流飲食店の店長代理を経て就農したという異色の経歴の持ち主だ。「飲食店時代、なかなか品質の良い野菜に出合えず、だったら自分で作ろうと思って」。奥様が農業をやりたいという希望を持っていたことも後押しし、未経験のまま飛び込んだ。   寒暖差がある芳賀町は甘い梨が育つ名産地。鈴木さんの父も梨農家だが、そこを継ぐのではなく別経営で、違った栽培方法を取り入れている。「10種を超える梨を一人で効率的に栽培していく方法として、木と木をつなげていくジョイント栽培を行っています」。常に何が自分の畑に適しているのか模索し続ける。「最初は60~80種類の野菜を育て、さまざまな条件を試し、何がどう違うのか実験していました」と笑う。そうした試行錯誤は“苦労”として語られることが多いが、鈴木さんは「楽しい」と笑顔。「職は変わっていますが、お客様の笑顔が見たいという気持ちはずっと同じです。自分が試行錯誤した結果で喜んでもらえることが幸せです」。信頼して作物を購入してもらうために「グローバルGAP」を取得、販売する野菜に自作のレシピを付けて食べ方を提案するなど、育てて売るだけではなく、その一歩先の気配りを持って農業と真摯に向き合う姿勢は、全国の料理人からも支持され、鈴木さんの野菜は県内だけではなく全国に運ばれている。  そんな種類豊富な鈴木さんの野菜を県内で購入できるのは、あぜみちと「道の駅はが」のみ。「あぜDELI」では、惣菜としても販売。愛情たっぷりに育てられた秋の味覚「梨」を存分に味わおう。

スイーツなどの飾りとして人気のエディブルフラワーは、遠方から買い付けに来る人もいるそう。

内藤 聖さん豊かな自然が育む栄養豊富な夏のオクラ

+

緑豊かな田園地帯にある内藤さんの畑。青々と茂る葉が、まるで緑の海のようにオクラ畑を埋め尽くす。美しく手入れされた畑は日々のていねいな作業の証だ。内藤さんが就農したのは7年前。それまで飲食業に就いていたが、体調を崩したのを機に祖父の農地を引き継いだ。「最初は肥料をやって水をまいておけば大丈夫でしょ、と思ってました」と笑う。農業の知識ゼロからの出発は失敗の連続。何千株もの苗をだめにし、数カ月間無収穫の時もあったという。「特に土づくりには苦労しました。原因不明の病気が出て土を調べたら、カルシウムやリンなどが不足していることがわかり、カキ殻を砕いてまいたり。今も土づくりの試行錯誤は続いています」。そんななか助けてくれたのは地域の先輩たち。「あぜみちの集荷場で先輩と話すようになり、いろいろなことを教えてもらっています。この地での長年の経験は、どんな知識よりも勝ります。師匠がたくさんいてくれてありがたいです」。秋からは主力商品のラディッシュやイモ類の出荷が始まる。「今後は山菜の出荷にも力を入れていきたい」と話す内藤さん。「工夫次第で結果が変わるのが農業の面白さ。若い人にもどんどん参入してきてほしいですね」と話してくれた。  夏の太陽を浴び元気に育ったオクラを、和食の定番『タコおくら』に仕上げてくれたのは、和の名店「京都吉兆」で修行を積み、その心を伝承する「日本料理 篠」の篠原料理長。「オクラは夏の和食に欠かせない食材。旬の味を家庭でも楽しんでください。器にスープの素と刻んだオクラを入れ、熱湯を注ぐだけでもおいしいスープになりますよ」と教えてくれた。栄養たっぷりの夏野菜を、上手に食卓に取り入れたい。

豊かな自然が育む栄養豊富な夏のオクラ

生井果樹園 〜NAMAI FRUITS GARDEN〜 生井 健斗さん地域第一人者として若き力が桃栽培に尽力

+

大きなハウスが建ち並ぶ2ヘクタールの畑で、梨をメインにさまざまな果物を栽培する生井さん。一度は農業とは無縁の企業に就職したが、21歳で就農した。「当初は梨だけだったのですが、10年前から父が桃を始めました」。芳賀町で桃を栽培する農家はなく、知識ゼロからの出発。まさに第一人者として親子で取り組んだ。そんな折、父が他界。わからないことばかりで戸惑う時に助けてくれたのは、父の友人たちだった。若くして後を継いだ生井さんを支えてくれたという。「もともと芳賀の農家さんは、大変な時はみんなで乗り越えよう、という仲間意識が強く助けられています」と話す。そして周囲に支えられながら4年前、ようやく桃の出荷にこぎつけた。しかしまた難題がふりかかる。「誰もここで桃が採れるなんて知らないので、販売先がなかったんです」。そこで取った行動は「桃を持って、ケーキ屋さんを回りました(笑)」。販売先も自身で切り拓く、そのバイタリティに感服だ。現在は、ブルーベリーやサクランボなどあらたな果物栽培のほか、ハウス梨の栽培にもチャレンジするなど、精力的に動き続ける生井さん。「果樹園と名乗っているのだから、父はいろいろな果物を栽培したかったはず」。父からのバトンをしっかりと受け取り進み続ける。終始農業を心から楽しんでいることが伝わってくる生井さん。今後のさらなる活躍を期待したい。  そんな生井さんの飛び込み営業を受け、桃を使った絶品スイーツを生み出したのは「杜のパティスリーぐるまん」の石川 喬シェフ。「生井さんの桃は名立たる名産地の桃とまったく引けをとらない」と太鼓判を押す。ケーキ・タルト・ゼリー…この時期限定の桃スイーツ、短い旬を逃さず味わいたい。

地域第一人者として若き力が桃栽培に尽力

せい子ファーム渡辺 宏さん・せい子さん元気で明るいスタッフと年間休みなく野菜を栽培

+

 肥沃な黒土の大地が広がる小山市西部に、東京ドーム2・5倍、12haの広さを持つ渡辺さんの畑がある。一年を通して、ダイコン、ゴボウ、ブロッコリーなどさまざまな野菜を休みなく栽培、出荷しており、現在はニンジン、間もなくネギが出荷時期を迎える。10名ほどのスタッフを抱え「農作業だけではなく、経理も人事も全部自分でやるから大変だよ」と笑う渡辺宏さん。以前はまったく違う分野でサラリーマンをしながら農業にも携わっていたが、50歳を機に退職し専業農家になったそう。「サラリーマン時代は夜中まで会社で仕事をしてきても、朝5時に起きて農作業をしたり、とにかく身体が大変だった」。そんな旦那様を支えてきた奥様のせい子さんと、これまで二人三脚でやってきた。土づくり、種まき、植え付け、除草、収穫と途切れなく続く仕事。「農業は天候などに左右されて、思い通りにいかないことも多いし、決して楽な仕事じゃない」と話す宏さんの横で「でもね、おいしかったよって言ってもらえるとうれしいの」と笑顔のせい子さん。そしてその様子を見守るスタッフも皆笑顔。あたたかな雰囲気の農園で愛情たっぷりに育てられた野菜なのだから、格段においしいに決まっている。渡辺さんの野菜はあぜみち全店で購入できるので、その味わいを確かめてほしい。  「ネギは和食には欠かせない食材です」と話すのは、「御料理 自治医大 多門」の関山オーナー。四季折々、かたちにとらわれない創作和食を得意とする同店らしく、ネギが主役の一皿を提案してくれた。「ネギはクセの強い食材ですが、熱を通すと甘みが立ちます。秘伝の方法で揚げたネギもおすすめです」。ネギが苦手な人にも味わってほしい一皿、予約をしてぜひ。

平坦な地形と、季節感がはっきりしている小山市の気候は、四季折々の野菜栽培を可能にしている。

ビオファーム サイトウ 齋藤 藤男さん元料理人が育てる安心でおいしい無農薬野菜

+

 以前はフランス料理店のシェフという異色の経歴を持つ齋藤さん。料理人として食材と向き合う中、規制緩和され、農薬の使用が増えていく日本の農業に危機感を感じたという。「料理をおいしいと食べてくれる人たちに、自分は安全な食事を提供できているのか?と農業に対する不信感を感じ、自分で野菜を育てようと思うようになりました」。料理人としてのキャリアを捨て、那須烏山市で有機農業を実践する「帰農志塾」に飛び込み一からノウハウを学んだ。現在は、5カ所ある畑で、80~90種類の野菜作りに取り組んでいる。一つひとつ手間暇をかけ育てられる齋藤さんの野菜からは、野菜が本来持つ深い味わいと、大地の力強さが伝わってくる。それは齋藤さんの「安心でおいしい野菜を食べてほしい」という元料理人としての想いの結晶でもあるのだ。「野菜作りで大切なのは土。栄養が多すぎてもダメで、微生物とか酸素濃度とかバランスが大事」という。「土壌の状態は雑草を見ればわかります。うちの雑草は元気でしょ?」と笑うが、その笑顔からは確かな自信を感じる。「今後は米作りにチャレンジしたい。帰農志塾では、手で苗を植え草を抜く。そうして手間をかけて育てた米は本当においしいんです。日本人の命の源は米ですから、そういう米を育てたいですね」。齋藤さんが育てる米を食べてみたい、そう思わずにいられない。  そして、開店当時からチャーハンには小松菜を使用するなど、小松菜を使った料理を提供しているのは、宇都宮市の人気中華料理店・小閣樓。「持ち味のシャキシャキとした食感と独特のエグミがいきる一皿」と矢野オーナー。小松菜の良さを最大限引き出した料理は、新たな味わいを教えてくれている。

少量多品目栽培の畑では、現在はサニーレタスや小松菜、キャベツなど葉物が最盛期。ここからブロッコリー・とうもろこし・カボチャと出荷が続いていく。

ベジタブルプラント今福 長山 雄貴さん足利のおいしい水で育てる植物工場産のレタス

+

 閑静な住宅街の一角に建つ建物。そのなかで8千株ものレタスが栽培されているとは誰も想像できないだろう。この植物工場で『織姫レタス』を育てる長山さんは「自分が農業をやるなんて考えていませんでした」と笑う。「父が鉄工所を経営していて、プラントで使う棚の部品を作ったことでこの栽培方法を知り、自分たちでもやってみようということになりました」。農業の知識も経験もまったくないなか、ほかのプラントに通い栽培方法を学び、試行錯誤の後4年前から本格的に工場を稼働したそう。  種床に種をまき、収穫まで40~50日。LEDライト、空調、給水は自動で管理され、人の手が必要なのは水に加え与える養分の管理と、植え替え、そして収穫だ。屋内でしっかり管理され育つため、害虫被害もなく安定した品質を保つ。狭い敷地の中、縦に栽培棚が積み重っていることで、移動が少なく効率的に作業ができるだけでなく、計画的に成長を調整することができるので、長期休みの取得も可能だ。「新しい農業の在り方の一つだと思っています」と長山さん。土地を有効活用し、少ない労力で効率よく作物を育てることができるこの工場農業は、作業が大変でなかなか休めない、というこれまでの農業のイメージを変えるかもしれない。温暖化など変化していく環境の中、安定した収穫が見込める点も魅力となっていくだろう。さまざまな可能性を秘めた長山さんの工場、今後の展開が楽しみだ。  その長山さんのレタスが楽しめる1stCAFEの鹿島店長は、「やわらかくシャクシャクとした独特の食感が特徴。えぐみのない味わいは子どもにも人気です」と話す。四季を通して安定した品質と価格も魅力のおいしいレタス、一度ぜひ味わってみて。

一見倉庫のような建物の中に、 スマート農法を取り入れた土のない「レタス畑」が広がっている。

いちご大家族 坂本いちご農園 坂本 幸正さん土づくりにこだわり味よく大粒なイチゴを栽培

+

 美しく広がる田園風景の中に建つ8棟のハウスで、とちおとめ・スカイベリー・とちあいかの3種類のイチゴを栽培する坂本さんは、就農前は工場に勤務するサラリーマンだったそう。「もともと自然の中で育ったこともあり、いつか農業をやりたいと思っていました」。やるなら生産量全国一のいちごで、と「いちごの里」の研修生に。その後独立し、今年6年目を迎えた。農園では「モリンガ・ステビア栽培」を採用。ビタミンやミネラルが豊富な海藻粉末を水に混ぜ、毎日イチゴに与えている。こうすることで土の中の微生物が増えて土が活性化、イチゴが本来持つ力を発揮し、元気に育つという。元気な株には大粒で味がよく、ツヤがある美しいイチゴがたくさん実る。「まだ新しい栽培法なので、これから改良していきたいですね」。
 イチゴ栽培は冬~春にかけてのイメージがあるが、実は一年中作業は続く。3月からは出荷作業とともに苗づくりが、5月にはハウス内を何もない状態に戻し、あらたな畝を立てる作業が始まる。そんな多忙な日々を「日の出とともに出勤して日が暮れると帰る、一年中忙しいですよ」と笑う。「工場勤務の安定よりも、自然の中で働くこと、そしてお客様から、おいしいと言ってもらえることが何よりうれしくて、農業を始めてよかったと思っています」と語る坂本さん。いずれは実家のある栃木市でハウスを増やしていきたいと夢を話してくれた。
 そんなイチゴを使ったスイーツを考案してくれたのは宇都宮市の名店「アルページュ」の糸井亮介シェフ。イチゴをさまざまな調理法で組み合わせた、見ているだけで幸せな気分になれるイチゴ尽くしの特別なスイーツは、要予約で味わうことができる。

イチゴを大きく育てるため、脇の花芽を摘んだり、害虫対策に古い葉を取り除いたり、細かい作業をていねいに行っている。

いちご兄弟 中島 亮佑さん食べて健康になれる栄養豊富なイチゴを栽培

+

 小山市西部の田園地帯。いちご兄弟という名前の通り、兄弟2人で営む農園では、現在6棟のハウスでとちおとめ・スカイベリー・とちあいかを栽培している。実家は動物病院、中島さん自身も一度はサラリーマンをしており、農業とは無縁だったが「次第に農業をやりたいと思うようになりました」。やるなら全国一のイチゴで、と思い立ち「いちごの里」の研修生に。経験を積み、6年前に独立した。独立にあたり、当時大学生だった弟の望さんに手伝ってもらい、ここまで二人三脚で歩んできた。
 いちご兄弟のコンセプトは“イチゴを通して人を豊かに”。夏は太陽熱で土の消毒を行い、害虫にはそれを食べてくれる天敵を散布、土を健康に保つために、微生物や酵素資材を定期的に与えるなど、農薬を可能な限り使わない栽培を行っている。「毎年新しいことを試しています。人の数だけ農法があって、何が正解かわからず難しいですが、だからこそ面白いのかも。この道を選んでよかったと思っています」と笑顔。完熟での出荷にこだわり、現在は直売のほか、道の駅みかも、あぜみちでの不定期販売など、購入場所が限られているが、今後は規模の拡大も視野に入れる。「技術を高め、ここのイチゴしか食べられないと言ってくれる常連さんにも、もっと喜んでもらえるよう、食べて健康になれるおいしいイチゴを作りたいですね」と語ってくれた。
 そんな中島さんのイチゴを使ったスムージーを提供しているのが『卵とミルクと』。「中島さんのイチゴは砂糖がいらないくらい甘くて食感も最高です」と料理長の田中一夫さん。一杯にイチゴ200グラム入り、イチゴそのものの味わいが楽しめる人気商品は、季節のスムージーとして夏ごろまで楽しめる。

おだやかな音楽が流れているハウス内で、ストレスなく育つイチゴ。真っ赤に完熟したイチゴは美しく、見た目も味も最高品質。

めおとや農園 仁平 康夫さんR293を“イモ街道”に!!サツマイモに情熱を注ぐ

+

 国道293号線を「イモ街道にしよう」と奔走中の仁平さん。茨城県日立市から足利市まで続く国道293号線はサツマイモの産地が並ぶ「さつまいも街道」。昨年末この国道沿いにオープンしためおとや農園直売所では、仁平さんが育て加工した干し芋や焼き芋のほか、県内各地で作られている他社の干し芋商品も販売されている。ライバル会社の商品を一緒に販売するのは「みんなで盛り上げていきたいから」。県にも働きかけ、JAしおのやにサツマイモ部会を設立、現在会員は9名だが、来年度には20名に増える予定だ。
 普段は米の仲買をしている仁平さんに5年前転機が訪れた。「農業生産法人 匠屋の土屋社長と出会い、サツマイモ作りの手伝いをしたらハマってしまって。自分でもやってみたいと仲買と二足のわらじで就農しました」。細い1本の苗を土に挿すと5カ月後に大きなイモが土の中から出てくる。「それが楽しくて仕方ない」と笑う。3年前からは干し芋作りを開始。イモをふかし皮をむき、ピアノ線でスライスして網に干すまですべて手作業だ。今後は菓子店などとコラボし商品開発をするなど、地域全体で盛り上げていきたいと話す。「農業は楽しいけど、儲からないとだめ。私のやり方が今後に続く人のモデルになれば」と新規参入者へ惜しみなく技術を伝えている。「いつかサツマイモを地域の代表農作物にしたい。そして店で農産物直売会とか開けたら楽しいだろうね」と笑顔で夢を語ってくれた。
 そのサツマイモを前に「種類によって甘さも性質も全然違う」と教えてくれたのは、イタリア料理アネッロの和氣弘典シェフ。「低温で加熱すると甘みが増す」というサツマイモ。皮まで余すところなく使い仕上げるサツマイモ料理は冬季限定だ。

小さな焼き芋を詰めた「ちびいも」は一番人気。ねっとりとした濃厚な甘さが楽しめる。通常サイズの焼き芋『焼甘藷』も販売中。

小山いちご農園 小山 雅史さんイチゴへの情熱が育む濃厚美味なスカイベリー

+

 宇都宮市東部の田園地帯で「スカイベリー」のみを4棟のハウスで栽培する小山さん。父親は「とちおとめ」と「とちあいか」を育てるイチゴ農家だが、当初、自身はJAに勤務。しかし父が高齢になったことと、自身の今後を改めて考えた末、40歳を機に転職を決意したそう。県の農業大学校を経て就農し、今年2回目の収穫期を迎えている。「身近な先生として父がいてくれるのは心強いですが、同じイチゴでも種類により育て方が全然違うんです」と難しさを話す。
 小山さんのスカイベリーは味が濃いと評判だ。おいしいイチゴを育てるコツは「水に液肥を混ぜ、少量を多回数で与えています。また自家培養した菌を散布し改良したりしています」と教えてくれた。ハウス内には、いつでも気温や地温、CO2濃度などを携帯電話で確認できる環境制御装置を設置し、水やりやハウスの開閉による温度管理を自動化するなど、スマート農法による効率化を図っており、農薬を極力使わないよう、イチゴの大敵ハダニ駆除に天敵を放つ、ハウスの保温には灯油暖房ではなく、ウォーターカーテンを取り入れるなど、環境にも配慮している。さまざまな取り組みを行いながらも「もっとやれることがあるはず」と小山さん。イチゴ作りへの情熱はとどまることがないようだ。
 そんなこだわりのイチゴを使いタルトを作るのは、開店一周年を迎える「メテオール」の菊池侑介店長。ショーケースには地元農家から毎日仕入れる大粒イチゴを使ったケーキが並ぶ。「食べ比べても地元のイチゴが一番おいしい」と菊池さんは言う。厳選素材で作るしっとり感が自慢のスポンジと、配合にこだわった生クリームに大粒のイチゴ。王道にして至高のスイーツに違いない。

パック詰めにも機械を導入し、スタッフの負担を軽減している。規格外のスカイベリーをあぜみちでは「いちご」として販売しているのでチェックしてみて。

NANTAIファーム 福島 章生さん見た目も味わいも特別な平飼い鶏の絶品卵

+

 日光宇都宮道路大沢インターチェンジからほど近い山裾に、今年オープンしたNANTAIファーム。豊かな自然の中、400羽のボリスブラウンと100羽の東京烏骨鶏を平飼いで育てている。養鶏場を任されているのが福島さんだ。「入社するまでペットを飼ったこともなく、大丈夫なのか不安もありました」。一からすべて手探りの状態、周囲の有識者からアドバイスをもらいながら、試行錯誤を重ねてきた。「戸惑うこともありますが、とにかく鶏たちがかわいいです」と目を細める。
 NANTAIファームの鶏たちは、砂遊びをしたり爪とぎをしたり、自由な環境の中でストレスなく育てられる。餌は良質な魚粉や、抗酸化作用のあるアスタキサンチン、ルテイン、カキ殻、貝の化石などを独自で配合し、水は塩素などを含まない地下水を与えている。恵まれた環境で産まれる卵は、割ると違いが一目瞭然。「手でつまめるほど弾力があり、かき混ぜても黄身と白身がなかなか混ざらない」という。味ももちろん別格だ。特に甘みがある白身が特徴で「卵かけご飯で味わってください。違いがわかります」と胸を張る。9月に烏骨鶏のヒナ100羽が新たに仲間入りし、ますます多忙な福島さん。鶏へ惜しみない愛情を注ぎながら、さらなる高品質な卵を生産するため、試行錯誤はまだまだ続きそうだ。
 そんな卵のおいしさをダイレクトに感じられる料理として『ふわとろ♪たんぽぽオムライス』を紹介してくれたのは、ハンバーグなど肉料理が人気の「りべるた食堂」。卵は「黄身の色味の美しさとコクで選ぶ」という坂田 剛シェフ。ふわりとした食感と濃厚な味わいは、寒い季節にほっこりとやさしい気持ちを運んでくれる一皿だ。

敷地内には直売所もあり遠方から購入に訪れるリピーターも増えているという。鶏たちは福島さんになついており、一斉に後をついて鶏舎内を歩く様子は圧巻だ。

58ロハスファーム 伊東 一寛農場長個性的なイタリア野菜をオーガニックで栽培

+

 58ロハスクラブがゴルフ場だった時代、レストランでおいしい野菜を提供したいと、敷地内に自社農場を作ったのがロハスファームの始まり。施設は形を変えたが農場はそのまま、イタリア野菜を中心に個性的なオーガニック野菜を栽培し続けてきた。「遠方から野菜を買うためだけに来てくれる人がいる。おいしいと言ってもらえるのが、何よりのやりがいですね」と農場長の伊東さん。ロハスファームには、矢板市と塩谷町の2カ所に農場があり、伊東さんは塩谷農場で主にトマトとイチゴを栽培している。塩谷農場は、もともと河川敷だったため水はけがよく、トマトの栽培に適した環境。肉厚で甘く特に人気が高い『トマトベリー』や『フルティカ』など5~6種類のトマトをほぼ通年栽培している。
 また矢板農場ではカリフラワーに似た『カリフローレ』や、丸い形の『イタリアナス』など、個性的な野菜が種類豊富に栽培されており、冬は『ロイヤルクイーン』という珍しいイチゴが最盛期を迎える。「女峰を開発した赤木さんが開発したイチゴで、実の中まで真っ赤。本当においしい」と伊東さん。市場には流通しない幻のイチゴだが、ここでは摘み取り体験ができ、直売もされる。あぜみちではロハスファームのブルーベリーやイチゴを使ったジャムを販売。粒が残るぜいたくな味が楽しめる。
 一方、「紫塚ゴルフ倶楽部レストラン」では、ロハスファーム自慢のトマトを使ったメニューが、朝食ビュッフェで提供されている。首都圏から訪れるゲストに、新鮮な地場野菜たっぷりの料理は大人気。「ロハスファームのトマトは実がしっかりしていて甘いですね」と料理長の渡辺さん。プロの技でさらに味わいを深めるトマトを、リッチな雰囲気のなか堪能したい。

親子2代でトマトづくりを続ける伊東さん。たくさんの愛情を受け育ったトマトは、真っ赤な宝石のように美しい輝きを放つ。

直井果樹園 直井 透さん昭和天皇にも献上された甘くみずみずしい完熟梨

+

 大正3年創業、宇都宮市の東部に広がるのどかな田園地帯にある直井果樹園。三代目の直井透さんは、妻の光子さんと二人三脚で梨を栽培している。「うちは目が行き届く広さの農園だから、ホルモン剤なども使わず自然のままに育てています」と透さん。ホルモン剤を使うと実は大きく育つが、自然に育った梨とは甘さが違うのだそう。有機肥料100パーセント、除草剤は使わず、草刈り機で刈り取り、刈り取った草は土に帰し肥料としている。農薬も極力使わないため、虫や病気には特に気を遣うそう。「病気などは早く見極めて対処しないといけないので気が抜けない」というが、そこに対応できるのは透さんの長年の経験があるからこそだ。かつては、昭和天皇が那須の御用邸で夏の静養をされるときは、必ず梨を献上していたということからも、その品質の高さがうかがえる。「毎年遠くからわざわざ買いに来てくれる常連さんもいるし、知り合いの梨屋が食べたがるんだよ。だから辞められない」と目を細める透さんを「リアルマリオみたいでしょう?」と笑顔で紹介してくれたのは次女の直美さんだ。現在は農業大学校に通い、農園の敷地の一角でオリーブやカボチャの栽培を行っている。透さん自身が「うちの梨は自分で食べてもおいしい」と胸を張る、愛情たっぷりに育てられた自慢の梨を、ぜひ味わってほしい。
 一方、直美さんは『宮ぴくるす』の製造にも携わる。直井果樹園の梨を使った『梨のぴくるす』は、今年から販売開始される新商品だ。「栃木のおいしい梨をあらたな形で提案したい」と話すCooking & Glow代表の金原 恵美さん。梨の歯ごたえや爽やかな甘みを消さないよう試作を重ねたという。梨の新たな味わいを楽しんでみては。

直井果樹園の完熟梨は「あぜみち」上戸祭店・駅東店のほか、果樹園の直売所でも購入できる。毎年ファンが待ち望む味をご賞味あれ。

黒川梨園 黒川 伸介一さん市街地近くの農園で糖度の高い完熟梨を栽培

+

 宇都宮市中心部から国道123号線を東へ向かい、鬼怒大橋を渡り終えたところ、道の両側に広がる梨畑が黒川梨園だ。一町二反の広さを、両親と奥様と、家族4人で手がける。取材時は「幸水」が実をつけ始めたばかり、8月下旬には「豊水」が最盛期を迎える。街なかでの梨の栽培は難しいのでは?と質問すると予想外の答えが返ってきた。「ここはもともと鬼怒川の河原だったところで、少し掘ると砂が出てくる。お陰で水はけがとてもよいですし、畑の横を大きな道路が通っていることで、車が風を作り空気を循環してくれるので、冬の寒さが和らぎ、霜の被害を受けにくい。実は梨の栽培にとても向いている土地なんです」そう教えてくれた。「梨農家は冬は暇なんでしょう?とよく言われるんですよ」と笑う黒川さんだが、実は一年中多忙だ。冬場は枝を剪定し、高く伸びすぎないよう横に這わせる作業を行う。たくさん枝を残せば梨の収穫量は増えるが、黒川さんは太陽の光が実にしっかり届くようにと間引く。そして夏場は灌水。水はけが良い土地ゆえ、水の管理には特に気を遣うそうだ。そうしてたっぷりの愛情を受け、樹上で完熟した梨は格別の味わい。毎年、遠方から訪れるリピータ―も多いという。これからの時期は、贈答用「にっこり」の予約も始まり、まだまだ繁忙期が続きそうだ。
 そして、毎年この時期になると梨を使ったケーキがショーウインドウに並ぶのは、宇都宮の人気洋菓子店『S・ナカヤマ』。水分が多く生菓子には向かないと言われる梨だが、軽く煮たり、ゼリーでコーティングするなど工夫を凝らし、梨の食感を崩すことなく新たなおいしさを提供している。季節限定商品のため、購入に訪れる際は事前に確認するのがおすすめ。

自慢のおいしい完熟梨は、直売所と「あぜみち」各店で購入できるほか、FAXでの注文も可能(090-8815-8885まで、事前に問い合わせを)。出荷準備を担当するのは奥様とお母さん。あ・うんの呼吸で作業が続く。

農業生産法人 株式会社 いわふね農園 樋渡 裕一さんホウレンソウを通年栽培いつか岩舟ブランドに!

+

 栃木市内で唯一、通年でホウレンソウを栽培している「いわふね農園」。樋渡さん一家は、福島県から6年前に岩舟に移住、土づくりや35棟あるハウス・ネットの設置、水路整備など、すべて自力で作り上げてきた。もみ殻やたい肥を二次発酵した有機肥料を使用、種も時期に合わせ使い分け、地下水から徐鉄するためのフィルターを設置するなど、さまざまな改良を行ってきたが、一番大切なことは「ホウレンソウと話をすること」だという。「元気ないけどどうした?とか毎日話しかけると、わかることがたくさんある」と話す。「ハウス栽培は成長速度を調整するのが難しいんです」。苦労もあるが「野菜嫌いのお子さんが、うちのホウレンソウなら食べる、などと聞くとうれしくて」と笑顔で話す樋渡さん。いわふね農園のホウレンソウは、愛情をたっぷりに育てられている。
 一方ハウスの傍らでは、夏場はカボチャ、冬場はブロッコリーも栽培されている。福島での農業時代と同じ品種を育てる樋渡さんの中には、変わらない福島愛がある。「私が育った地区には“岩船”という地名があって“大平山”もある。不思議な縁を感じています」と話す樋渡さん。第二の故郷・岩舟町のために、若手農家に指導を行い技術を惜しみなく伝えている。今後は、地元の農家同士で連携しながら、岩舟ブランドを立ち上げるのが目標だ。
 そして、同じ岩舟町にあるA5ランク和牛の焼肉専門店「松喜」でも、地元産のホウレンソウやカボチャを使ったメニューを提供している。「岩舟エリアで育てられる食材のおいしさを、お客様に伝えたいです」と、松井オーナー。その日一番のやわらかく脂がのった肉と新鮮な地元野菜、暑い夏を乗り切るパワーチャージに訪れたい。

ハウスの中では、時期をずらし栽培されているホウレンソウが常に出荷できる状態で待機。夏場の暑さ対策には断熱ネットを使用