- お客様目線を大切に農業の新しい道を切り開く -
のぼり旗はためくあぜみちを進むと、広壮な梨畑が見えてくる。
「豊水」「秋月」「かおり」が所狭しと並ぶ直売所に流れるのは、なんと“パンクロック”。
「農業を始める前はパンクバンドでプロを目指していました。アパレルに興味があり、古着屋の店長もやりました」と阿久津憲人さん。
転機は東日本大震災。
「ニュースで食への不安が流れる中、自分も子どもたちに安全な食べ物を食べさせたい。だったら自分で作ろうと」。
自ら立ち上げたアパレル店の経営と、生産者という二足のわらじ生活。
「農業の奥深さを知って、ハマってしまって。
農業に本腰を入れることにしました」3年間の兼業後、「観光なし園」の開設や、梨を使った加工品の開発・販売と、アイデアを次々形に変えていく。
「やりたいことはたくさんある。仕事に正直に向き合い、お客様目線で考え、固定概念にとらわれない農業がしたいです」
「阿久津さんからはいつも刺激を受けています」と朗らかに語ってくれたのは、瓶詰工房「Funky Pine」の松島宏直さん。
無添加で作られる商品は消費者からの信頼も厚い。
自ら依頼者の畑に出向きリサーチ。
こだわりや想いをのせた物作りがモットーだ。
「まず試作品を作り、意見を交換します。万人に愛される味ではなく“依頼者が一番好きな味”を追い求めます」この秋、松島さんの悲願であった小売店舗を宇都宮市に構えることになった。
「加工所が間に入り、生産者同士の橋渡しができれば」生産者同士をWin-Winでつなぐ理想的な関係が、ここ栃木県で少しずつその輪を広げているのを感じることができた。
ただ作るだけではなく、人が喜ぶ顔が見たい。
生産者の実直な想いを“食”から感じてもらいたい。
● 乙連沢梨園
採れたての梨が並ぶ直売所。
果肉感たっぷりのオリジナルドレッシングや焼肉のタレも販売。
かわいらしいオリジナルラベルが目印。