- 若者に憧れてもらえる“カッコイイ農業”を -
苗半作—良い苗ならばそれだけで作物は半分できたようなもの、という言葉がある。
「大塚なえや」は、人々が長蛇の列を成す“異色の農家”だ。
元をたどれば葉タバコの生産者。
そこで培われた土作りと苗作りのノウハウでプロへ供給してきた高品質な苗を大々的な一般販売へ踏み切ることで勝負に出たのが、3代目である佳延さんだ。
かつてプロスポーツの世界でハイレベルなプロ意識をその肌で体感した彼。
結婚を機に25歳で本格的に農業で生計を立てて行くと決めたとき、やるなら徹底的に、真剣にやろうと決めた。
苗の販売告知には地元ケーブルテレビへの出演や折込チラシ配布など、既存の農家の枠を超えた広報活動を行った。
農業のイメージを変えたいと願い、服装にも気を遣う。
赤や青などの原色を配したアウトドアブランドのウエアは、ただ格好良いだけではない。
地域のしがらみに縛られる中で「格好だけ」と言われないよう気張るための彼なりの背水の陣でもある。
家業である苗屋を続けるために始めた野菜づくり(苗半作—つまり、苗が作れれば、野菜は作れるのだ)では、「野菜は腕もあるけど、品種だ」と言う元品種改良研究者である父の言葉を信じ、10年の歳月をかけ土地に合うものを見つけ、他の農家の出荷が終わる頃により良い品を安く出せる体制を整えた。
「夢中になって野菜を育てて、畑を眺めるのが楽しい」と語る佳延さんに、「それをいかに売るか、が私の仕事なんです」と話す妻の文江さん。
支えあう夫婦の姿に、農業の未来が重なって見えた。
● 大塚なえや/おおつかなえや
住所: 〒329-4304 栃木市岩舟町静和80-4
夏場はナスを筆頭に野菜の苗を求める人で行列ができる。
その他年間通してさまざまな野菜の生産を行い、近隣の直売所や「あぜみち」などで販売を行う。
真ん丸、大きく実ったキャベツ。200円を切る価格設定がこだわり。
●「大塚なえや」のキャベツ
収穫時期:10月〜3月/葉肉がしっかりとした寒玉系。
火を通してもシャキッとした食感で炒め物に最適。
このほか、直径40cm超の「札幌大球」も趣味で栽培。