- 清潔で無駄のない農業は新規就農者の良き手本に -
汚れる、費用がかかる、早朝作業がつらい…。
それらの“固定概念”を払拭する農業を実践する富山さん。
「若い人たちも始めやすいと思う」という農業スタイルは“汚れない、安上がり、好きな時間に作業をする”というもので、一般的なイメージと真逆を行く。
「ハウスはオークションサイトで購入した中古品です」。
まるで新品と見まがう、長さ50メートルの立派なハウスの中、整然と並ぶのは「ANS独立ポット栽培」で養液栽培するミニトマトだ。
「ハウスの中は土足厳禁。それにより外からの害虫を防ぎ、病気を抑制しています」。
さらに少量培地なので、雑草防除が不要だそう。
「余計な作業に時間を取られないので、自由な時間を多く取れる。大変という感覚がないので“農業をしている”というより“トマトのお世話をしている”という感じです。作業も好きな時間に行っているんですよ」。
富山さんの畑は、無駄なものが一切ない。
だからこそ、最小限のコストで品質のいいトマトの栽培が成り立つのだ。
東京、イタリアで研鑚を積み、都内の有名店で料理長を務めた経歴を持つ、さくら市の「Anello」のオーナーシェフ・和氣弘典さんが宝咲農園のトマトで作ってくれたメニューは、トマトのパスタ。
「このミニトマトは加熱してもほとんど水分が出てこないので、パスタのソースにピッタリです」と話す。
ニンニクの香りを移したオリーブオイルにトマトを加え乳化させたシンプルなソースは、素材のうまみが際立つ逸品で、一口ほお張った瞬間に思わず目を見開いてしまうほどのおいしさだ。
生産者の愛情が詰まった食材が、最高の腕を持つシェフの元へ渡ったとき、至高のパフォーマンスを携えて私たちを喜ばせてくれる。
● 宝咲農園 サンウェルス
ほとんどが自作、という清潔感あふれるハウス。
独立している苗が印象的。
糖度と酸味、食感のバランスが絶妙な「宝咲トマト」。