- 家族の時間を大切にする 農業という“ものづくり” -
ナスとトウモロコシ、ショウガを計50アールの畑で露地栽培する塙農園。
主力のナスは約20アールの土地に1000本の苗を植えて栽培、1年で約8トンを出荷する。
ナス栽培では王道のV字4本仕立てという支柱で育ち、アーチ状に枝が重なる畑は、実や枝の紫色と相まって少しミステリアスな、しかし生命力にあふれた場所となっている。
名古屋出身、栃木で自動車関係の会社に勤めていた朝章さんは、42歳だった6年前に就農、畑を借りてナス栽培を始めた。
夫の異業種転職に妻は驚きそうだが、実は実家がナス農家だった寿枝さんはすんなりと受け入れた。
台風の被害でめげてしまいそうになった時には、先輩ナス農家である妻の実家から、自然災害に対する心構えを、厳しい言葉ながらも教えてもらった。
もともと物事のプロセスを立てて考えるのが好きという朝章さん。
それは野菜作りにも生かされる。
いわく「車も野菜もどちらも、ものづくり。
何をすればどうなるか、イメージすることは変わりません」。
会社員時代と異なり、すべて自分で決められる裁量権を持てるのも、農家の良いところだと教えてくれた。
さらに「特定の休みはないが、雨が降ったら家族でおでかけができますしね」。
昆虫が大好きな息子さんも畑に遊びに来る。
子どもの声が聞こえる所で作業ができるのは、やはりうれしそうだ。
比較的手頃な価格で手に入る、おうちごはんの味方のナスを、高級和食に昇華させるのは、宇都宮にある完全予約制のそばと懐石料理の店「喜饗」。
ナスの紫色を残すため、ダシを染み込ませては二度氷水に浸すという、ていねいな仕込みを経た煮びたしは、「千両なす」の食感も生かされた繊細な味わいと美しさを兼ね備える。
● 塙 朝章さん・寿枝さん
野菜はあぜみち全店で購入可。
塙農園ではナスを5月から11月まで栽培・出荷している。