- 一瞬のひらめきを大切にクリエイティブな農業を -
地面に落ちた一枚の枯葉を見て何を思うか——。
「知恵は知識にまさる」とはパスカルの言葉だが、赤川さんは、観察で得たひらめきを農業に生かす達人だ。
有機栽培でレンコンを育てる赤川さん。
使用する肥料は、「乾燥茶葉」「カカオの皮」「コーヒーかす」「大豆」「でんぷんのり」と、原材料はすべて食品。
「乾燥茶葉は保水力があるので、腐葉土の枯葉より養分を保持してくれる。
ここの砂地に適した堆肥はこれだ!と思いました」その発想力は、鳥よけにも発揮。
「鴨が育ったレンコンを食べてしまうんです。被害に遭わない方法を考えていた時、草がある場所だけ無事なことに気付いて」あえて畑で草を育ててみると、これがビンゴ!鴨が草を食べるためか作物への被害は減少。
しかし、養分が取られてレンコンは痩せてしまう。
「草を茂らせるタイミングを何年も調整して、今年で4年目。やっといい頃合いを計れるようになりました」晴れやかな笑顔を見せる赤川さんからは、レンコンへの惜しみない愛情が感じられた。
二期倶楽部の総料理長などを歴任してきた宮﨑オーナーシェフが、自由な発想で訪れる人を魅了する「美食工房ラトリエ・ムッシュー」では、赤川さんのレンコンを使った料理を提供している。
店で使う食材は、すべて自ら出向き、自ら味わい、厳しい目で選び抜いたもの。「赤川さんのレンコンは、レンコンそのものの味わいがしっかりしている。食感もいい」と宮﨑氏。この“レンコンそのものの魅力”がストレートに伝わるよう、さまざまな調理法を駆使。
レンコンのまた新たな魅力に気付かせてくれる。
達人が育てた野菜を達人が調理し、提供する。
ゲストとして訪れる我々は、その競演に魅了されてやまない。
● 赤川農園
大豆や乾燥茶葉などを混ぜた堆肥は、毎年約4〜6トン使用される。
“ムチン”を豊富に含むレンコンは、風邪の予防に最適!