- 野菜の声と種の記憶が要 見守り育てる自然栽培 -
里山に囲まれた日光市針貝で農業を営む吉原治さんが、さまざまな農法を試し、最終的に突き詰めようと考えたのは「自然栽培」。
「奇跡のりんご」を育てた木村秋則氏に刺激を受け、独学で勉強。
さらに深く知識を得たいと、石川県にある「のと里山農業塾」に一年間通う決意をし、見識を深めた。
卒業後には第一子を授かり、「子どもたちが安心して食べられる野菜を作りたい」との思いは一層強くなったという。
「長雨で大変な目にあったとか、雨が少なかったとか、タネは育った環境を覚えているんです。そして、その記憶を活かして成長するんです。すごいですよね」。
タネが潜在能力を発揮できるように原産国に近い環境を作り、育つ過程を見守り、サポートをする。
育成を肥料と農薬無しで、成長を促すということは、簡単なようでいてとても難しい。
収穫量も少なく、生産者が抱えるリスクもとても多い。
それでも、この農法を続ける理由。それは「やっぱり、おいしいから」。
自然の力で育った野菜を使用した「身体リセットご飯」を提供するのは、同市内の日光街道沿いにある「自然茶寮 廻」。
自然栽培や有機栽培で作られた野菜と、地場産の無化学肥料・無農薬栽培で育てられた「滋養米」を使った料理が楽しめる。
体調を崩した経験から、奥さんと2人で“心と身体を労わる”をテーマに店を始め、今年で10年が経つ。
吉原さんが丹精こめて育成したダイズは、店主の山口さんの手によって、『チリコンカン』へと変わり、ゲストの“元気”をサポートする。
“健康でいられますように”作り手の願いが込められた食材が、私たちにたくさんのパワーを授けてくれる。
● 吉原ファーム 吉原治さん
50年以上作り続ける「ダイズ」。食用花「ダリア」「相模半白胡瓜」「シャドークイーン」など、珍しい野菜も積極的に栽培。