- “指名買い”続出の枝豆作り -
梅雨の晴れ間、抜けるような青空の下に、県内最大の面積を誇る枝豆の畑が広がっていた。
長嶋さんは、もともとはニラを中心に生産していたが、「作る人、作る土地によって味が全然違う」枝豆の“面白さ”に魅了され、以来10年、枝豆を作り続けている。
5月下旬から収穫が始まる品種『福だるま』から『湯あがり娘』『ゆかた娘』『雪音』まで、10月上旬までは忙しい日々が続く。
それでも“鮮度が命”の枝豆をいつでも新鮮な状態で消費者に届けられるよう、長嶋さんは早朝から夕方まで汗を流す。
大豆の未成熟状態のものが枝豆と呼ばれるが「大豆のような“穀類”の感覚で作ると失敗する。枝豆は“野菜”として作らないと」と語る。
長嶋さん自身がトライ&エラーを重ね、たどり着いたのは、先人の“失敗”に学ぶこと。
「農業は経験。マニュアル通りにはいかない。成功談なんて役に立たない。先輩農家の“失敗談”こそが役に立つんです」今は地元の後輩枝豆農家に、自身が積んだ経験を伝えていく立場だ。
輸入野菜が急増する昨今、日本の農業に対する危機感も感じている。
「若い就農者も少ないし、生産者は減っていく一方。今後、国産野菜の価値は上がっていくでしょう。だからこそ、多様化するお客様の価値観をしっかりキャッチして、求められるものを作っていかないと」と力を込める。
それでも「農業はおもしろい」と笑う長嶋さんの笑顔に、農業の明るい未来を期待せずにはいられないのだ。
● 長嶋 徹/ながしまとおる
長嶋さんが作る枝豆は、半分は首都圏で『タンタンえだまめ』として知られるブランド野菜として、半分は「あぜみち」で販売されている。
品種によって香りも味わいも異なる枝豆。
●長嶋さんの枝豆
5月下旬〜10月上旬/香りがよく甘みもあり、栄養価も高く、手軽に食べられる枝豆。
大豆の特徴を持ちつつ、緑黄色野菜としての成分も併せ持つハイブリッドな存在。